知っていること vs. わかること vs. できること
知っていることと、わかっていることの間には、大きな溝があります。
例えば「音を外す歌手ってダメなのよね」みたいな話があったとして、
「Aって歌手もBって歌手もピッチ悪いんだよ」という知識はちょっとネットでも見ればすぐに拾えることです。
しかし、これはあくまでも知識。
「本来440Hzで歌うところを410Hzで歌っちゃう人は音痴と言われる」程度の、その気になれば誰でも手に入ることなのです。
「わかる」人は二次情報からではなく、
自分自身で情報を収集できる人。
「Aは音を外すと言われているけど、
実は中央のA周辺のピッチが甘いだけで、他の音はそうでもないね。」
などと、独自に判断して、情報を発信できる人のことです。
例えば、ネット上にある情報を拾って、
それをリツイートやシェアしている人は「知っている人」。
自分自身で発見した情報を発信している人を「わかっている人」。
・・・と説明すると、わかりやすいでしょうか?
さて、「音を外す」とはどんなことを言うのか、
音を外さないためにはどんな練習の仕方をしたらいいのか、
どんな筋肉や、脳のファンクションをつかったらいいのか、
・・・そんなことを知っている人がみな、
それを「できる」とは限りません
反対に、「できる人」がみな、そんな知識があったり、
わかっていたりするわけでもない。
むしろ、知っている人、わかっている人には「できない人」が多く、
また、「できる人」は、勘や鍛錬でやっているので、
「知らない」「わからない」という人が多かったりします。
走るのが速い人が、みな、
なぜ自分が早く走れるのかを知っているとは限らない。
解剖学や運動生理学の大家の先生が、足が速いとは限らない、
というようなことです。
そう考えると、知識なんかいらない。
繰り返しトレーニングする方がいいじゃないか。となりそうですが、
ある程度の年齢になってから、
知識や思考など左脳のアクティビティを介さずに、
芸事やそれにまつわる感覚を体得するのは、
非常に時間がかかる、難しいことだというのが私の考え方です。
「これこれこういうのが正解。」
「正解を得るためには、こういう努力が必要。」
それらをきちんと左脳レベルで理解して、
「こんな風に感じるのが正しいらしい」などと
カラダの細部の感覚とつなげてあげることで、
すっかり休眠しているカラダの感覚が蘇ってくるというイメージです。
そうやって、左脳からアプローチして右脳の感覚を呼び覚ますと、
トレーニングの効果はどんどん上がります。
「知っている」を「わかる」に。「わかる」を「できる」に。
一歩一歩進んでいくことが実は一番の王道であり、近道というのは、
どんなスポーツも技術習得も同じですね。
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