ヴォーカリストこそ、もっと、ちゃんと「聴く」!
バンドのパートの中で、一番コピーしやすくて、
誰でも、そこそこやれるパートってなんでしょう?
はい。
もちろんヴォーカルです。
歌は、何回か聴いていれば、誰だって、
そこそこ口ずさめるようになります。
よほど、キーがあっていないとか、
とんでもなくテンポが速いとか、
はたまたちんぷんかんぷんな言語で歌われているのでもない限り、
歌は、誰でも、そこそこ歌えるようになるものです。
さて、ここからが問題です。
「最も上達しづらいパートはなにか?」と聞かれたら、
私は迷いなく「ヴォーカル」と答えます。
理由はいろいろありますが、
最大の原因は、ヴォーカリストこそ、
「ちゃんとやれているつもり」に最も陥りやすいパートだからです。
何回も、何十回も、何百回も聴いている曲。
完全に耳タコですから、誰だって、「この曲なら歌える」と思う。
音源を流しながら、本人と一緒に気持ちよく歌う。
メロも、フェイクも完璧。
なんなら歌詞も暗記している。。。
ところが、このレベルの歌を聴かせてもらって、
わかっているな、ちゃんと歌えているな、と思うことは、
そうですね・・・・10回に1回、あるかないかです。
つまり、ほとんどが、「ちゃんとやれているつもり」。
カラオケで、お金を払って、いい気分で歌うのなら、
もちろんそれでOKですが、
ハッキリ言って、そのままでは一生上達しません。
楽器の人は、ある程度の演奏をするには、
音源をそこそこ耳コピしなくちゃいけない。
たとえ楽譜があっても、
タイミングや、ニュアンスや、ヴォイシングや・・・
技術がある人ほど詳細に、
ない人でも、それなりに、
コピーしないと演奏になりません。
(時々、学生などで、演奏になっていないのに
知らん顔してやっているプレイヤーを見かけてびっくりしますが)
楽器の演奏をするには、それなりに努力がいるのです。
プレイヤーは、楽器をはじめてからこれまで、必ず、
ある程度の時間を楽器の練習に費やしてきたはずです。
一方でヴォーカリストは、どうでしょう?
「こどもの頃から歌が好きで、いっつも歌ってましたから」と、
自慢そうに言う子がいますが・・・
う〜ん。それってただのカラオケ好きな人と、
なにか違いますか?
はい。もちろん、いつものように、
これだけで、ものすごい歌手になってしまう、
一部の天才のことは忘れてくださいね。
このブログの読者のみなさんは、私と同じ。
下克上を夢見る同志と思っていますから(^^)
ごく普通の人が、
カラオケ好きな人と同じレベルのことしかしていなかったら、
頭ひとつ抜けることは非常に難しいでしょう。
では、どうしたらいいか?
まずは、もっとちゃんと「聴く」。
これに尽きます。
ポイントは「一緒に歌わないこと」。
細部に至るまで、徹底的に「聴く」。
音の変わり目はどうか?
ことばのニュアンスはどうか?
歌い出しのアタック感はどうか?
語尾はどうか?
リズムの乗り方はどうか?
フレージングのポイントはどこか?
ブレスの位置はどこか?
音色の変化はどうか?
音の強弱はどうか?
ビブラートのかけ方はどうか?
音の長さはどうか?
・・・etc.etc….
1曲、ワンコーラス、ワンフレーズの中の情報量は、
信じられないくらいたくさんあります。
その情報を拾う前に、気持ちよく歌い出さない。
まずは、じっくり聴く。
何度も聴く。
情報を拾う。
それから、「声を出さずに」、一緒に歌ってみてください。
まだまだ拾えていない情報に気づけるようになるはずです。
声を出して一緒に歌うのは、その後なんです。
歌でも、プレイでも、名演といわれる演奏には、
ぎっちり、情報が詰まっている。
そんな視点で聴き始めれば、
ますますたくさんの情報がアンテナに引っかかってくるはずですよ。
関連記事
-
-
「じっくり聴けない人」の3つの言い訳
歌の上達のポイントは、音源をじっくり聴いて、 そこから可能な限り、たくさんの情報 …
-
-
歌の構成要素を分解する〜ラララで歌う〜
大好きな曲を、オリジナルを歌っている歌手と一緒に歌う。 何度も、何度も、繰り返し …
-
-
ちゃんと鳴らす!
ヴォーカルのテクニックのひとつに、 「息混じりに歌う」というのがあります。 基本 …
-
-
「ピッチが悪い!」を直すロジカルシンキング
「ピッチが悪い!」 年間通して、いや、1週間に、 このことばを、何回口にするでし …
-
-
「原体験」こそが自分を動かす原動力
「どんな音楽が好きなの?」という問いに、 アイドルやV系スターの名前を言うことが …
-
-
抜本的に、根本的に、ミュージシャンは、まず、そこ!
一定のレベル以上のミュージシャンになると、 そこから上の実力の差は、 一般の人の …
-
-
コツコツ積み重ねる微差が、逆転勝ちを演出する
自分の生まれは選べません。 生まれたときから、才能やルックスや音楽環境に恵まれて …
-
-
人間がカラダをつかってやることの基礎って、すべて同じなんだ。
うん十年ぶりにスキーというものに出かけてきました。 ぶっちゃけ、学生時代に友だち …
-
-
バンドとカラオケは全然違うっ!
カラオケ育ちの若者たちは、バンド内のコミュニケーションが実に苦手です。 &nbs …
-
-
やっぱ、最後はエネルギー。
歌の指導をしていく中で、 心がけているのが、 感覚的な説明に終始したり、 精神論 …
- PREV
- ちゃんと「聴く」!
- NEXT
- 歌の練習で絶対にはずせない3つのポイント