やっぱ、最後はエネルギー。
歌の指導をしていく中で、
心がけているのが、
感覚的な説明に終始したり、
精神論を展開したり、
スピリチュアルな話を持ち出したりしないこと。
どんな歌い手にも、
それぞれの思いがあるし、
心の歴史があります。
音楽に対する考え方や、
音楽から取り出したい想いは、
ひとりひとり違って当然なのです。
「心をこめて歌いなさい」なんてことは、
教えられなくたって、
やりたい人はちゃんとやっている。
ある人にとって「心のこもった歌」が、
他の人にはたまらなく「暑苦しい歌」に聞こえることだってある。
心の問題を扱ったり、
精神論を展開するのは、
専門家にお任せすべきですし、
「こう感じるべき」、
「こう考えるべき」を語るのは、
どこかの教祖様のお仕事。
言語化できない、
フワッとしたことばで熱く語られても、
受け手は戸惑うばかりです。
それぞれの想いや心の在り方に正解はないのです。
そこに100%のリスペクトを払う。
それぞれが信じていること、
それぞれが表現したいことを、
いかに100%に近い形で、
声に、パフォーマンスにするための
お手伝いをできるかどうか。
トレーナーの仕事はそこに尽きます。
とはいえ、
「エネルギー」ということばだけは例外です。
そもそも、エネルギーは、物理。
素晴らしいパフォーマンスには、
エネルギーが乗っている。
集中するから、自らのエネルギー量が最大化されるし、
テクニックがどうとか、
音域がどうとか、
そんな制約を超越したところで、
エネルギーは、聞く人の心を動かします。
いかに、自分というエネルギーのすべてを
パフォーマンスに昇華できるかが、
すべてのパフォーマーの練習や修行のゴールなのです。
これはもうね、
精神論とか、スピリチュアルなお話ではなく、事実。
真理です。
エネルギーを最大化する。
自分というエネルギーを表現し切る。
最後はね、もうそこです。
いや、そもそも、そこです。
圧倒的なエネルギーの前で、
ピッチだの、リズムだの、カツゼツだのというのは、
ディテールに過ぎません。
しかし、そのディテールが、
エネルギーに制限をかける。
思うように声が出ない、
心で描いているように歌えない、
バンドのサウンドに乗っかれない。
だから、集中できない。
エネルギーが最大化されないわけです。
基礎力やテクニックなどという、
「雑念」にエネルギーを奪われないために、
私たちは、基礎練習に励み、
テクニックの修練にいそしむのです。
そんなお手伝いをするのが、
トレーナーの仕事でもあります。
しごき倒すのは、「愛」ですね。

◆“MTL ヴォイストレーナーズ・メソッド” 〆切間近。
業界トップクラスのメソッドで、圧倒的な結果を出す。ヴォイストレーナーとして活躍されている方はもちろん、ヴォイストレーナーを目指す方、トレーナーという仕事に興味があるという方も。
関連記事
-
-
未来の自分を信じる~Singer’s Tips#29~
自分がオーディエンスだったら、 どんなシンガーを見たいか? どんな歌を聴きたいか …
-
-
バンドのメンバーに歌をけなされたら、真っ先に確認すべきこと。
リハやライブでバンドのメンバーに歌をけなされた、 という悩みを相談されて真っ先に …
-
-
デモをつくれ!
「音楽の世界で認められたいなら、 とにもかくにもデモをつくれ」と、 音楽学校でも …
-
-
「課題曲」って、どうよ?
大学4年になったばかりのこと。 清水の舞台から飛び降りる気持ちで通い始めた歌の学 …
-
-
人は生涯に、何曲、覚えられるのか?
優れた作曲家、アレンジャー、プレイヤー、 そして、ヴォーカリストの多くが、 びっ …
-
-
「欲しい本が見つからなかったら、自分で書け」
「わからないこと、困ったことがあったら本屋に行け。 世の中には、自分と同じことで …
-
-
「そこまでやる?」がオーラになる。
「そこまでやらなくても・・・」 思わず、そんな風に言いたくなるほど、こだわりの強 …
-
-
「それは、MISUMIさんが無理だって思っているからです」
後に圧倒的な成功を手にすることになる、 ある若き女性と、 食事をしていた時のこと …
-
-
「好きなことやれよ」
「好きなことやれよ。 好きなことのない人生なんて、つまんねーぞ。」 私の人生にも …
-
-
恋するように、バンドする。
棚卸し週間にて、 これまでにやってきたバンドを ひとつひとつ思い出してみました。 …
- PREV
- 生(リアル)な音、ください。
- NEXT
- なんで、ずれないんですか?
