「私のカラダはギターには向いていないんだ・・・」
高校時代、ギターリストを目差していた頃のお話。
クラプトンに憧れて、黒いストラトを買い込み、
ジェフ・ベックのマネをして太めの弦を張り、
日々練習に励んでいたことがあります。
ところがね。
全然上達しません。
家で座って弾いているときは何とかなるのですが、
なんなら、あこがれのジミー・ペイジみたいに、
ギターをやたら低く持ちたいものですから、
実際リハーサルやライブ(と言っても文化祭とかですが)などで、
立って弾くと、
ミストーンは多いし、音は濁るし、
小さな手では弦が押さえられなくって、
結局猫背になるし・・・
まぁ全然思うように弾けないわけです。
それで、音楽雑誌で、かのギターリストたちを眺めては、
「どうせ私は背が低いから・・・」
「やっぱり私は手が小さいから・・・」
などなどと凹みまくり、
そのうちに、ギターをあきらめてしまったのでありました。
当時の私の結論。
「身長170センチ以上で、
指の第2関節から上の長さがギターのフレットの幅より長くない人は、
ギターリストになれない。」
ところがです。
それから何年かして、
ミュージシャン仲間に、
「素晴らしいギターリストには、
身長のずっと小さい人、
手のひらのうんと小さい人もたくさんいるでしょ?」と笑われました。
いわれるまで、そんなこと、考えてもみなかった自分。
勝手に決めつけて、そして逃げていたのです。
やがてギターリスト、ジェフ夫さんと結婚し、
家には、やたらたくさんギターがあるし、
好きなだけ教えてもらえるわけだから、
「これを機に、もう一回、ギターを弾いてみようっ!」と、思い立ちます。
ところがです。
家にあるギターたちは、どれもこれもやたらと重い。
おまけにネックが太くって、
腰の位置にギターを下げるどころか、
座って弾いても、ハイコードがちゃんと弾けない。
あ〜あ。
やっぱり私のカラダはギターには向いてないんだ。
本物のGibsonやFenderは、
あたしみたいなチビ手&短腕女には弾けないんだ。。。
と、またしてもあきらめかけたある日、
「だったら、キミのカラダに合うギターを買えばいいじゃない。。」
と、ジェフ夫さん。
やがて、私の手にもしっくりくるギターたちに出会い、
私の腕の長さでも、
充分カッコよく見せられるストラップの長さを見つけ出し、
いいギターはボディが軽くても、弦が細くても、
やっぱりいい音がするのだと学習することになります。
身長180センチで大きな手ののジェフ夫さんと、
160センチの私が同じ楽器を弾けば、
操作性に違いが出るのは当然です。
反対にマンドリンのような小さな楽器は、
ジェフ夫さんのような手の人には持てあますに違いありません。
さて。
楽器を習得したければ、
まずは自分のカラダときちんと向き合う。
たとえ身体条件がどうあれ、
どうしてもギターを弾きたければ、
弾けるようにフォームを工夫したり、
ギターを研究したりするもの。
ヴォーカリストも同じです。
ヴォーカルを上達したければ、
まず、自分の声ときちんと向き合う。
どの辺まで高い声が出て、どこからチェンジして、
下はどこまで使えて、
どの辺が一番安定感があって。。。
きちんと向き合えば、
やるべきことや、付き合い方のコツも見えてきます。
自分だけにしっくりくる、カラダ使いを見つけましょう。
購読はこちらから。
関連記事
-
-
「同じに出す」が一番難しい。
同じ音を連続して弾くとき、 ピアノという楽器の完成度の高さを、 しみじみと感じて …
-
-
「自分の声の地図」を描く
「あなたの音域はどこから、どこまで?」 「え?」 「高い方はどこまで出るの?下は …
-
-
ことばの解釈に「正解はない」
高校時代の大半は、ロックとバンドとギター(そして男の子)に夢中で、 「学校の勉強 …
-
-
「一生に一度しかヴォイストレーニングを受けられない人に、 3時間で歌が上達するためのすべてを伝える」
MTLのメイン講座、 『MTL ヴォイス&ヴォーカル Lesson 12』(MT …
-
-
頭を2針縫いましてん。
3日ほど前の夜中のことです。 打ち合わせと称する飲み会からの帰り道、 ジェフ夫さ …
-
-
「飲みニケーション」は死んだのか?
ここ数年、若手バンドマンたちの「クリーン」ぶりに、 驚かされるシーンに何度も出会 …
-
-
「曲の可能性」をありったけ取り出す
大好きで、よく引用することばに、 世紀の名ピアニスト・ホロヴィッツの 「楽譜は紙 …
-
-
高い声はどうやって出したらいいのか?
「どのくらい高い声を出せるのか?」という議論は、 「どのくらい速く弾けるのか?」 …
-
-
「原体験」こそが自分を動かす原動力
「どんな音楽が好きなの?」という問いに、 アイドルやV系スターの名前を言うことが …
-
-
人の本質は変えられないなら、半世紀も、一体何をがんばってきたんだか。
先日、小学校時代の同級生グループ、通称「4人組」で久しぶりにランチをしました。 …

