大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

ことばの解釈に「正解はない」

      2016/01/18

高校時代の大半は、ロックとバンドとギター(そして男の子)に夢中で、
「学校の勉強なんてくだらない」と思っていました。
 

点数を取るための勉強に何の意味がある?

そもそも、点数で私の何をジャッジできる?

つまらないオトナが決めた基準で、自分自身の価値を計られてたまるか!

 

そんなロックな高校生でした。

 

さて、そんな私でも、やがて、「勉強」というものにおもしろさや意味を見出して、
時間を惜しんで教科書に向かうようになります。

 

ことばの意味は、時代や文化の変化とともに変わるといわれますが、

それよりなにより、ことばをつかう個人個人の経験や考え方によって大きく違うもの。

そして、ひとりひとりの成長や変化とともに、変わっていくものです。

 

「勉強」という意味ひとつからでも、取り出される情景や感情は人さまざま。

それが、ことばというものを深く、美しくしているとも言えます。

 

では、詩や歌詞はどうでしょう?

 

こちらのブログでもよく登場する私の父は、
こどもに「こども向け」なものを与えるのは、
つまらないと思っていたようなところがあります。
 

子守歌の代わりにサラ・ボーンやビリー・ホリデイといったジャズを聞かせ、

童話を読み聞かせる代わりに、
萩原朔太郎や、草野心平の詩を読み聞かせたり、
私たちに暗唱させたりしていました。
 
もちろん、本当の意味などわかるわけもないのですが、
父は姉と私がわからないということばの意味を根気強く解説しては、
「で、ここは、どういう意味だ?」「これ、どう思う?」と聞いてきます。
 
そして、そのたびに、とんちんかんな答えをする私たちの話を、
 
「ほほぉ。おもしろいね。」
「なるほど〜」とおもしろそうに聞くのです。
 
父に、「この詩はそんな意味じゃない」と否定されたり、
「この詩はこういう意味だ」などと押しつけられたことは、ただの一度もありません。

 

時折、「そうかなぁ?」「もっとよく考えてごらん」と促されたり、
父の解釈を教えてくれては、「お前たちはどう思う?」と、
意見を求められたりしたことはありますが、
 
それでも、いつでも、父は、私たちに、
ことばの解釈は、正解は、人間の数だけあって、
人間はいつもことばの世界で自由だと言うことを教えてくれたように思います。

 

 

解釈の難しい歌詞を歌うときも、
自分が経験したことのない内容を歌うときも、

 

作者の気持ちや、表現しようとした世界を追求するのも、

自分自身の経験に置き換えてみるのも、

全然違う意味づけをするのも、

拡大解釈や縮小解釈をするのも、

全部自由。
 
そうやって、発想を転換したり膨らませたりすることこそが、
歌の楽しさ、自由さです。

 

誰かの考えに捕らわれる必要はない。

まして、作者と同じ気持ちで歌わなくちゃいけない、なんてことも絶対にない。

誰かに解釈を押しつけられることも、
誰かに自分の解釈を否定されることもない。

未熟なら未熟なまま、
年を取ったら、その年齢相応に、
自由に、奔放にことばを解釈し、表現して行けばいい。

同じことばを歌う時も、人それぞれが違う歌になる。

それこそが、詞の深さ。おもしろさです。

 

 

歌い手も、聞き手も、そして、教える側も、教わる側も、
お互いのことばの表現を尊重し、受け入れていかれたら、
もっともっと、ことばは深く、楽しいものになるはずです。

 
17190684_s

 - Life, My History

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


  関連記事

『きみ、ホントに、よくプロになれたよねぇ。』②

さて、たった2本のトラを引き受けただけのはずが、 いきなり全国ツアーを回ることに …

人の心を動かすのは「エネルギー」。

アート鑑賞が好きで、 折に触れ美術館を訪れます。 国内外で、かれこれ30年以上ア …

成長に痛みが伴うのは、 本気度を試されているから。

高校1年の夏だったと記憶しています。 手足が痛くて、眠れない夜が続きました。 筋 …

no image
書くことについて、思いきり語ってしまった。

昨年秋から「ことばの断捨離」と位置づけて、 ブログを綴っているわけですが、 書く …

引き返せない場所へ、自分を連れて行け!

うるゴメ時代。 私にとっては、バンドでのメジャーデビュー作品となる、 アルバムの …

よき時代のよきものを、 いい形で後世に伝える方法

高校時代、何が嫌いって「古文」の授業くらい 嫌いな授業はありませんでした。 使わ …

楽器店に貼り付けられたメン募に電話した日

インスピレーションか、衝動か、はたまた「魔が差す」というのか。 気になったらその …

no image
「今に見てろよ」はGoサイン!

音楽を志す人だけでなく、 人と違うことをがんばろうとする人は、大小さまざまな挫折 …

優秀な人は群れない。媚びない。焦らない。

今日は朝から、頭脳派かつ純粋にそれぞれの仕事を追求するリアルプロフェッショナルの …

一生ヴォイストレーナーのいらない人になる。

「歌なんか、人にならうもんじゃないだろう。」 そんなことばをどれだけ言われてきた …