大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

生(リアル)な音、ください。

   

溝が浅くなるまで、繰り返し聞いたレコード。
ぼろっぼろになるまで、使い込んだ歌詞カード。
テープが伸びちゃうまで聞いた、ラジオの録音。

昭和アイテムばかりですが、
こんな効率の悪い、手間暇かかるグッズたちが、
たくさんの音楽家を育ててきたわけです。

あの頃思ったものです。

一発で、聞きたいところがポンと再生できたらいいな。
必要なだけテンポを落とせたらいいな。
レコードの、聴きたい曲だけ、取り出して買えたらいいな。
何回録音&再生してもへたらないテープがあったらいいな。
自分のレパートリー曲の歌詞カード、全部持ち歩けたらいいな。

ユーザーのそんな思いを開発者たちはひとつひとつ拾って、
叶えてくれたわけです。

こんな便利な時代になると、

おんなじ曲、同じ箇所を、
何回も何回も聞いたりしなくなる。
「アルバム」などという形式は形骸化してしまう。
歌詞なんかいちいち覚えなくなる。

30秒だけ聞いて、ぐっとこなければ、
はい、次!
曲名どころか、
アーティストが誰かさえ興味を持たない。

そんな音楽との接し方が普通という、
若者たちであふれています。

次はどこに行くんだろう?
今の若者たちは、
何を不自由に感じ、何を求めているんだろう?

先日、渋谷のスクランブルスクエアをのぞいたら、
「レコード」が並んでいるお店があって、びっくりしました。

「レコード針を落とす」というのが、
どうやらカッコいいらしい。
時代は巡るのかもしれません。

 

 

今、誰もが心から飢えているのは、
リアルな音。生の音。毛穴で感じる音。
握手。ハグ。キス。

この思い、衝動だけは、
どんなに時代が進んでも、おそらく消えることはなく。

「3次元は無理なんだ」という層が、
まぁ、多少は増えたとしても、

人という動物は、触れあってなんぼ。
生きるということは、
「生(なま)」そのものなんですよね。

そろそろ、インドアな自分に、活を入れて、
生(リアル)なことやらなくちゃなぁと、
思っている昨今です。

もう、動き出してもいいよね?

◆一生に一度、集中的に学ぶだけで、”自分で自分に教えること”を可能にするMTL 12。毎週日曜日10時〜Youtubeにて公開中。
毎週月曜発行中!声に関するマニアックな情報やインサイドストーリーをお届けする無料メルマガ『声出していこうっ』。バックナンバーも読めます。

 - B面Blog, Life, 音楽 , , ,

  関連記事

「明日っからがんばろう」の「明日」は一生来ない。

「明日っからダイエットしよう」 「明日っから練習がんばろう」 「明日っから早起き …

キャリアの節目をポジティブに旅する

「節目」というものをポジティブに捕らえるか、ネガティブに捕らえるかで、 人生のク …

直感に突き動かされて、崖から飛び降りる

行動のきっかけは、いつだって、 ちょっとした思いつき、衝動、閃き、出来心。 即断 …

「大きい音」を扱うのって、テクニックがいることなんですぞ。

「ラウドな音楽をやっている」と言うと、 デリカシーのない、 雑な演奏をしていると …

「歌うのが嫌い」という人の本当のわけ

「音楽に興味がない」「興味が持てない」という人は、ときどきいますが、 「音楽が嫌 …

「極上の挨拶」は多少の不出来を凌駕する。

夏の終わりを楽しもうと、 愛犬と一緒に郊外のドッグプールに行ってきました。 施設 …

ヴォイストレーナーという仕事

自分にできないことは教えられない。 いろいろな考え方があるでしょうが、 私は、歌 …

「やりたいことなのにがんばれない」の7つの理由

「やらなきゃいけないって、わかってるんですけどね・・・」 「いや、本当にやりたい …

アイディアは、ポンと降ってくるギフト。

クリエイティブなアイディアって、 頭で考えているうちは絶対に出てこないもの。 作 …

15分間の名声(15 minutes of fame)

「誰もが知っている有名人」は、 自分が有名であるという認識こそ、もちろんあるけれ …