生(リアル)な音、ください。
溝が浅くなるまで、繰り返し聞いたレコード。
ぼろっぼろになるまで、使い込んだ歌詞カード。
テープが伸びちゃうまで聞いた、ラジオの録音。
昭和アイテムばかりですが、
こんな効率の悪い、手間暇かかるグッズたちが、
たくさんの音楽家を育ててきたわけです。
あの頃思ったものです。
一発で、聞きたいところがポンと再生できたらいいな。
必要なだけテンポを落とせたらいいな。
レコードの、聴きたい曲だけ、取り出して買えたらいいな。
何回録音&再生してもへたらないテープがあったらいいな。
自分のレパートリー曲の歌詞カード、全部持ち歩けたらいいな。
ユーザーのそんな思いを開発者たちはひとつひとつ拾って、
叶えてくれたわけです。
こんな便利な時代になると、
おんなじ曲、同じ箇所を、
何回も何回も聞いたりしなくなる。
「アルバム」などという形式は形骸化してしまう。
歌詞なんかいちいち覚えなくなる。
30秒だけ聞いて、ぐっとこなければ、
はい、次!
曲名どころか、
アーティストが誰かさえ興味を持たない。
そんな音楽との接し方が普通という、
若者たちであふれています。
次はどこに行くんだろう?
今の若者たちは、
何を不自由に感じ、何を求めているんだろう?
先日、渋谷のスクランブルスクエアをのぞいたら、
「レコード」が並んでいるお店があって、びっくりしました。
「レコード針を落とす」というのが、
どうやらカッコいいらしい。
時代は巡るのかもしれません。
今、誰もが心から飢えているのは、
リアルな音。生の音。毛穴で感じる音。
握手。ハグ。キス。
この思い、衝動だけは、
どんなに時代が進んでも、おそらく消えることはなく。
「3次元は無理なんだ」という層が、
まぁ、多少は増えたとしても、
人という動物は、触れあってなんぼ。
生きるということは、
「生(なま)」そのものなんですよね。
そろそろ、インドアな自分に、活を入れて、
生(リアル)なことやらなくちゃなぁと、
思っている昨今です。
もう、動き出してもいいよね?
◆一生に一度、集中的に学ぶだけで、”自分で自分に教えること”を可能にするMTL 12。毎週日曜日10時〜Youtubeにて公開中。
◆毎週月曜発行中!声に関するマニアックな情報やインサイドストーリーをお届けする無料メルマガ『声出していこうっ』。バックナンバーも読めます。
関連記事
-
-
「聞こえませーん」
会議の時、 「聞こえませーん」と言われることが恐怖で、 必死に声を振り絞って話す …
-
-
音楽を仕事にできる人
「音楽なんて仕事にならない」 「音楽で食べていくのなんて無理」 音楽を志し、日夜 …
-
-
音楽は進化を続けている
「最近どんなの聞いてるの?」 若いアーティストたちのカウンセリングで、 彼らの好 …
-
-
ティーンエイジャーという名の憂鬱
プライベートレッスンでは、事務所さんやレコード会社さんから、活躍中のアーティスト …
-
-
基準が曖昧なものほど奥が深いのだ
「おじょうちゃん、いい青に塗っといたよ。」 土建屋を営んでいた実家 …
-
-
「モラハラ」に負けない思考法
「ブスが話しかけるんじゃね〜よ!」 さまざまなハラスメントの標的になっていた、か …
-
-
「美しき手順」を持つものに、運命の女神は微笑むのだ。
「はじめて日本に行って、 お店でちょっとしたおみやげを買ったとき、 本当にびっく …
-
-
けなし上手 vs. 誉め上手
「MISUMIは音痴だからさぁ。」 「ほら、あんたって、お勉強はできるけど人間的 …
-
-
人生で大事なことは、みんなバンドから教わった
バンドって、うまく行ってるときは、 「これほど素敵なものはない!」と思えるくらい …
-
-
そして、戦いは続くのだ。
最近、ブログを読んでくださっているというさまざまな方とお話するたびに、 「あぁ、 …
- PREV
- 「空気読め」とか、違くないか?
- NEXT
- やっぱ、最後はエネルギー。
