大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

人の心を動かすのは「エネルギー」。

   

アート鑑賞が好きで、
折に触れ美術館を訪れます。

国内外で、かれこれ30年以上アートに触れているので、
まあまあ愛好家の部類に入るとは思いますが、

プレートを眺めたり、音声ガイドを聞きながら、
お行儀よく人の列に並んで順々に作品を鑑賞する、
という定番スタイルが実に苦手です。

単に、列に並ぶのが嫌いなのか?
人とおんなじことをするのがイヤなのか?
我ながら不思議で、あるとき、その理由を考えました。

そしたらふと、
自分は知識や教養を得るために、
アートを見に行くんじゃないよなと、
気づいたのです。

一番好きなのは、
展覧会を俯瞰するように、ふわーっと歩き回って、
胸をぐしゃっとつかまれる作品との出会いの瞬間を楽しむ、
という、ちょっと変わった鑑賞方法。

そのときに私の心を捕まえるのは、
作品の奇抜さでも、そのディテールでも、
アーティストの技術力でもなく、
作品からあふれ出してくるエネルギーなんです。

オーラと言ってもいい。

とにかく、なんか、ぐおーっと作品から伝わってきて、
おおお、と引き寄せられる。

それで、はじめてプレートを見る、という具合です。

そうやって、アートを見ていると、
名画が名画と言われる理由が、
本当によくわかります。

名画には、ものすごいエネルギーが宿っているんですね。

ことさら時間をかけた作品とは限らないし、
技巧や構図や色彩がそれほど優れた作品とも限らない。
アイディアが斬新であるとも限らない。

ただ、アーティストのとんでもないエネルギーが、
その一筆一筆に込められて、
100年経っても、作品と共に、そこにある。

そのエネルギーに魅入られた人たちの、
作品への愛情も同時に作品に宿っているでしょう。

 

だから、アートを見にいくと、
全身がエネルギーで満たされる。

結局人は、
エネルギーに感動し、
エネルギーに突き動かされて生きているんだなと。

音楽も、文章も、映画も、教育も、
みな、同じなのではないか。

知識じゃない。
技巧じゃない。
デザインでも、ディテールでも、
アイディアそのものでもない。
もしかしたら、思い入れですらない。

表現したい、創りたい、伝えたい、という情熱。

そのエネルギーの強さゆえに、
アイディアにこだわり、
デザインにこだわり、
ディテールにこだわり、
テクニックにこだわる。

この順番を間違えると、
どんなに時間をかけても、
どんなに努力をしても、
結局は伝わらない、
空回りなものを世の中に送り出してしまうのではないか。

 

人の命はエネルギー。
人の心を動かすのもエネルギー。
人はエネルギーで、できているんですね。

情熱を傾けられることに、
すべてのエネルギーを注ぐように、
生きて行かれたら本望です。

◆【ヴォイトレマガジン『声出していこうっ!me.』】
ほぼ週1回、ブログ記事のインサイドストーリーなど、1歩進んだディープな話題をお届けしているメルマガです。無料登録はこちらから。バックナンバーも読めます。

 

 - B面Blog, Life, 本, 映画, アート...etc.

  関連記事

大切なのは声の「大きさ」や「高さ」ではなく、「音色」なんです。

東京アラートは出ていますが、 自粛解除になったということで、 すご〜〜く久々に、 …

自分を好きになるということ。

こどもの頃から、 自分じゃない人間になりたいと思っていた年月があまりにも長くて、 …

「気になる人」。

これから有名になろうという人、 活躍する人に共通の資質は、 「気になる人」である …

「売れてるもの」が嫌いな人は「売れない人」?

あまのじゃくなのか、変人なのか、 こどもの頃から、 「みんなが好き」というものに …

間違えるなら大胆に間違える。

ここ数日、あまり慣れないことに取り組んでいます。 慣れないことに取り組んでいると …

ネガティブ・スパイラルを抜け出す。

私たちが日常的に心の中で繰り返していることばが、 自らのセルフイメージをつくり、 …

キーは、歌えりゃいいってもんじゃないんですよ。

カバー曲を歌うとき、 無条件にオリジナルのキーで歌っている人は多いはず。 私自身 …

「なんか、できちゃうかもしれない」妄想

ロックダウンを機にスタートした英語のレッスンも8週目。 今日も、”S …

200個の骨。600の筋肉。

人間のカラダには、およそ200個の骨があると言われています。 その上に乗っている …

「空気読め」とか、違くないか?

生まれて初めてアルバイト情報雑誌を買って、 バイトを探した時は、 一体みんな、何 …