人の心を動かすのは「エネルギー」。
アート鑑賞が好きで、
折に触れ美術館を訪れます。
国内外で、かれこれ30年以上アートに触れているので、
まあまあ愛好家の部類に入るとは思いますが、
プレートを眺めたり、音声ガイドを聞きながら、
お行儀よく人の列に並んで順々に作品を鑑賞する、
という定番スタイルが実に苦手です。
単に、列に並ぶのが嫌いなのか?
人とおんなじことをするのがイヤなのか?
我ながら不思議で、あるとき、その理由を考えました。
そしたらふと、
自分は知識や教養を得るために、
アートを見に行くんじゃないよなと、
気づいたのです。
一番好きなのは、
展覧会を俯瞰するように、ふわーっと歩き回って、
胸をぐしゃっとつかまれる作品との出会いの瞬間を楽しむ、
という、ちょっと変わった鑑賞方法。
そのときに私の心を捕まえるのは、
作品の奇抜さでも、そのディテールでも、
アーティストの技術力でもなく、
作品からあふれ出してくるエネルギーなんです。
オーラと言ってもいい。
とにかく、なんか、ぐおーっと作品から伝わってきて、
おおお、と引き寄せられる。
それで、はじめてプレートを見る、という具合です。
そうやって、アートを見ていると、
名画が名画と言われる理由が、
本当によくわかります。
名画には、ものすごいエネルギーが宿っているんですね。
ことさら時間をかけた作品とは限らないし、
技巧や構図や色彩がそれほど優れた作品とも限らない。
アイディアが斬新であるとも限らない。
ただ、アーティストのとんでもないエネルギーが、
その一筆一筆に込められて、
100年経っても、作品と共に、そこにある。
そのエネルギーに魅入られた人たちの、
作品への愛情も同時に作品に宿っているでしょう。
だから、アートを見にいくと、
全身がエネルギーで満たされる。
結局人は、
エネルギーに感動し、
エネルギーに突き動かされて生きているんだなと。
音楽も、文章も、映画も、教育も、
みな、同じなのではないか。
知識じゃない。
技巧じゃない。
デザインでも、ディテールでも、
アイディアそのものでもない。
もしかしたら、思い入れですらない。
表現したい、創りたい、伝えたい、という情熱。
そのエネルギーの強さゆえに、
アイディアにこだわり、
デザインにこだわり、
ディテールにこだわり、
テクニックにこだわる。
この順番を間違えると、
どんなに時間をかけても、
どんなに努力をしても、
結局は伝わらない、
空回りなものを世の中に送り出してしまうのではないか。
人の命はエネルギー。
人の心を動かすのもエネルギー。
人はエネルギーで、できているんですね。
情熱を傾けられることに、
すべてのエネルギーを注ぐように、
生きて行かれたら本望です。

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