大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

ビブラートのかけ方ぁ〜!?

   

ビブラートのかけ方などというものをはじめて意識したのは、
『これなら歌える!ボーカリストのためのマジカルトレーニングブック』(リットー)
という長いタイトルの本を書いた時でした。

編集のミヨシさんと打ち合わせしていたら、
「MISUMIさん、ビブラートのかけ方は絶対に書いてください」と
真っ先に言うので、思わず、
「え?ビ、ビブラートぉ??そんなこと興味あるの?」
と聞くと、
「歌うまくなりたい人はみんな意識してるんですよ」と言うじゃありませんか。

どっひゃあああ。
ビ、ビブラァ〜トですかぁあああ。。。

すでに、バリバリスタジオをこなしていた頃です。
もちろん現場でも、
「ここ3連でビブラートをかけてください」とか、
「基本ビブラート、かからないように歌ってください」とか、
オーダーはあったわけですが、
それはごくマニアックな精度の話だと思っていました。

歌の学校でボイストレーナーの先生についたときも、
「人は誰でもビブラートはかかるものだから、
ビブラートを一切かけないノンビブラートをやる方が難しい」と教わって、
ひたすら声を揺らさないようにまっすぐ出す練習に明け暮れたものです。

そんなことを話すと、ミヨシさん、
「いや、シロウトは、ビブラートが上手にかかっていると、
歌がうまいって感じるんですよ」・・・。

そんなわけで、
個人的には完コピの中で知らず知らずできるようになっていたビブラートに、
はじめてフォーカスすることになりました。

そもそも、なんで、ビブラートがかかっていると「うまい」と感じるのだろう。。。

ネット以前の社会では、こんな時は、
書物をひもとくか、
自分自身の経験を掘り返すか、
カラダを頼りに発見するかしか道はありません。

そういえば・・・と思い出します。

高校時代に一緒にバンドをやったヤマワキくんは、
指板の上で、めちゃくちゃ指をゆらゆらさせていて、
何してるんだろうって、思ってたけど、
あれ、ビブラートかけてたんだなぁ。。。

ギターでも、やっぱりビブラートって大事なんだな。
でも、声は目で見えないからなぁ。

ホイットニーとか、ポーンて、ノンビブラートで伸ばしてて、
次の瞬間ビブラートをかけるあの感じとか、
確かにカッコいいし、マネしたもんだけど・・・。

演歌じゃ音程わかんないくらい、
激しくビブラートをかける人、いるなぁ。
ビブラートかけながらどんどん声がうわずって行っちゃう人も、いる。

演歌のビブラートと、ホイットニーのビブラート、
一体なにが違うんだろう・・・。

学校時代に、すっごく細かくビブラートがかかることを、
みんなが「ちりめんビブラート」と呼んでいて、
へたくそに聞こえる代表ように言ってたけど、
ランディ・クロフォードとか、アーロン・ネヴィルだって、
ちりめんだけど、カッコいいし、めちゃくちゃうまいじゃん。とか。

どんなに正確でも、あまりに深くて執拗なビブラートは、
やっぱ趣味じゃないし、気持ち悪いなぁと思ってみたり・・・。

あれこれ、思い出し、片っ端から聞き直し、
実際にマネをしながら歌ってみたりしました。

『マジカルトレーニングブック』を書き終えてからも、
そうやって、ことあるごとに、
ビブラートのかけ方や、
その種類、かけ具合のコントロールなどなどを、
研究、検証、実践してきました。

確実にお伝えしたい大事なことは、
ビブラートは物理現象だということ。
誰でもかかるし、自分自身でコントロールすることも可能であるということ。

ビブラートがかからないのは、発声に緊張や無理があるからで、
ビブラートをかけたかったら、声の揺らし方を練習するよりも、
まず、脱力やカラダのバランスを練習すべきです。

カラダが緊張や力みから解放されて、
自然なビブラートを引き出せるようになったら、
そこからがトレーニング。

ビブラートのかけ方に正解はありません。
もんのすんごい深くても、
かけないように歌っても、
ちりめんでも、音程ビブラートでも、強弱ビブラートでも、
なんでもいい。

他人がどう言おうと、
自分の心地いいビブラート、それが正解。

そこを探し出すプロセスが修行であり、音楽です。

なんでもかんでもネットで情報を拾って、
いちいち飛びついて一喜一憂するのは、やっぱり違うんですよね。

 

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