大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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高い声は、がんばらずに出す。~SInger’s Tips #17~

   

「高い声は、がんばらないと出ない」と、
思っている人がいます。

なぜそうなっちゃったのか、
何かの拷問にあっているかのように、
ぎゅーーっとクビを締め付けて出そうとする人や、

全力で息を詰めて、
顔を真っ赤にしながら出そうとする人や、

その他、
思いっきり上を向いたり、
顔をゆがめまくったり、
クビを前に突き出したり・・・。

もうね。
ありとあらゆるバリエーションで、
声帯様を虐待して、
無理矢理、高い声にリーチしようとするわけです。

いろんなところで、
何回もお話してきているんですが、

力を入れれば入れるほど、
高い声は、出にくくなります。

声帯様は通常、
1.5〜2㎝程度の長さで、厚みは2〜3ミリ。
非常に華奢なお姿です。

その華奢なお姿の声帯様を、
デリケートな動きでコントロールするのは、
喉頭周辺の筋肉。

クビを締め付けたり、
ノドを圧迫したりすることは、
そうした、
「華奢で」「デリケートな」組織の、
お邪魔でしかないんです。

高い声を練習するときは、
まずは、鼻声レベルで、

「アニメみたいな」「ふざけた声」
でやってみます。

次はファルセット。

鼻声やファルセットで出るということは、
声帯様はその高さまで十分出す準備ができているということ。

「つかえる声」に育てていくのは、その後です。

声帯様がしっかり伸びる感覚をつかめ、
ピッチが確実に届くようになったら、
ちょっとずつ「音色」を調整し、
声を立派にしていくのです。

ノドまわりに力が入ってしまうと、
共鳴が起こりにくくなり、
いい声になりません。

息を強くしてしまえば、
せっかくいい感じで振動している声帯様が、
また鳴らなくなってしまいます。

呼吸は一定に保つ。
声の支えをつくる。
その上で、「鳴る声」をイメージして、
練習を重ねてください。

ノド締め癖がある人は、
ぎゅっとノドに力を入れないと
仕事をしている気にならないらしいのですが、

ノドを締め付ければ苦しい。
呼吸は続かないし、
長時間歌えない。
ノドが痛くなったり、声が枯れたりもする。
おまけに、
いい声は出ないし、ピッチも届かない。

ポイント、ゼロです。

まずは、力を抜く。
どんなスポーツもおなじです。


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