大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

地上で最も完璧な楽器

   

ピアノ。アコースティックギターやヴァイオリン。
管楽器たち・・・

歴史ある楽器たちを見ていると、
その無駄のない完成されたデザインにしみじみ感動を覚えます。

部品のひとつひとつが、目的を持って取り付けられている。
ネジ一本、無駄なものはありません。

そして、だからこそ、時代を超えても、
変わらぬデザインのまま、作り続けられているわけです。

 

 

さて。

これは、セミナーなどで毎回お話することなのですが、

私たちのカラダはもう何万年も進化していません。
少なくとも、そのように言われています。
つまり・・・人間は、
神様的に、完成したデザインということなのではないか?

 

つまり・・・私たち人間という楽器は、
どんな楽器よりも古くから完成している楽器ということで、

つまり、だからこそ・・
私たちのカラダはどんな楽器よりも、
表現豊かに、人の心を細やかに奏でてくれる楽器なのではないか。。。

そんな風に仮説を立て、
声や歌を、そのレッスン方法を研究し続けています。

 

今まで、その仮説を裏切られたことはありません。

人間のつくる楽器よりも、
神様のつくった人間のカラダという楽器は、もっともっと完璧✨

 

しかし、このカラダは、
人間がつくったどの楽器よりも、

理解されようともせず、
適当に扱われ、
つかいかたをマトモに教育されることも、
学ばれることもなく、
テキストや教則本も至って少なく、
痛めつけられ、
酷使され、

挙げ句の果てに、
「楽器の出来が悪い」と言われる、
本当に、本当に可哀想な楽器でもあります。

 

この楽器の持つ無限の可能性を、
一体どれだけの人が知っているのか。
信じているのか。

そして、そのうちのどれだけの人が、
その可能性を引き出す努力をし、
どれだけの人が、実際にそれを引き出せているのか?

 

斜めに立てかけられたまま、
そのネックに重たいバッグをかけられたギター。

海風の吹きさらす土地に、
カバーもされず、砂埃にまみれ、置き去られたピアノ。

そんな楽器がどんな風になるか、
誰だって想像つくはずなのに、

あぁ、人間って、そんなことを自分のカラダには、やっている。

 

そんな楽器に音が悪い、とか、
すぐ弦が切れる、とか、
鳴らない、とか
文句言ったら、

「管理が悪いから当たり前です!」と専門家に一喝されるのは、
目に見えています。

 

ものすごく、ものすごく基本的なことなのに、
まったく理解されていないんだなぁ。

 

そんなことを、さまざまな人に出会い、
レッスンさせていただくたびに思うのです。

 

まだまだ、ミッションは終わりそうもありません。

 

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 - カラダとノドのお話, 声のはなし

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