自分をつかって「人体実験」をしないこと
1964年に行われた「断眠実験」というのを
聞いたことがあるでしょうか?
17才の高校生が睡眠研究で有名なスタンフォード大学の教授の立ち会いの下で、なんと264時間(11日間)を不眠で過ごしたというもの。
彼は4日目に誇大妄想、6日目に幻覚、9日目には視力低下や被害妄想、最終日頃には極度の記憶障害などを経験したそうです。
実験終了後、15時間ほどの睡眠の後には
すべてが回復し後遺症も残らなかったと言われていますが、
その後、その危険性を考慮し、
ギネスは「断眠時間」を認定するのをやめたそうです。
人間というのは馬鹿なことをするものですなぁ。
『スーパーサイズミー』というドキュメンタリー映画を
知っていますか?
「1日3回X30日間、マクドナルドのみで食事をし続けたらどうなるか?」という実験を、監督のモーガン・スパーロック自身が、自らの健康を犠牲にして行ったことで有名です。
33才だった彼の体重は1ヶ月で11キロも増え、
躁うつや性欲減退、肝臓の炎症などを経験したそうです。
わかるやろ?
やらなくても。。。
人は、「がんばれば」なんとかなると思う。
自分のカラダをちょっぴり犠牲にして、
「がんばる」ことに意義を見出す。
実験や、ドキュメンタリーレベルで、
自分のカラダの酷使をしているアーティストたち、
シンガーたちが多すぎると、実は感じています。
朝一で地方へ移動。
リハーサルからコンサートを経て、東京へ直帰。
そのまま夜通しテレビ収録。
翌日は朝から撮影。
合間を見て、打ち合わせと曲づくり。
夜中に終了し、翌日は朝からレコーディング。。。
とあるアーティストの3日間のスケジュールです。
一時のことならまだしも、
これが、延々と、1年中続いているような人もいます。
全国ツアーを回っている最中に次のアルバムの制作、
レコーディング、プロモーション準備・・・
そんな話を、日常的に耳にします。
売れている証拠、と言われれば、
なるほど、そうでしょう。
すべて車移動で全国ツアー&車中泊、
ライブ後の移動時間4〜5時間は当たり前、
という過酷なツアーをしている人たちもたくさんいます。
気力も体力も充実していて、
自分たちで望んでスケジュールを組み、
精力的に活動している子たちは、
もちろん、それでいいでしょう。
心配なのは、ファンやスタッフに期待され、
体力も気力もめいっぱいなのに
アドレナリンを出し続けて、無理を続ける状態のとき。
無理を続ければ、やがて、歪みが出てきます。
拒食症や過食症になったり、
ドラッグやアルコールに走ったり、
発声障害、ポリープ、結節などの声の症状、
難聴などの耳の症状、
不眠や鬱に悩む人もいます。
取り返しのつかないことになるまで、
本人も、スタッフも、
「仕方ないよね」とがんばり続ける。
人にはいつか、限界がやってくるのです。
冒頭の断眠実験の高校生は、
自ら望んでやったことでしたが、
もちろん、この実験の前には、多くの動物実験が行われ、
たくさんの可哀想なラットの命を奪っています。
カラダの声をきちんと聞く。
その声に従う勇気を持つ。
歌えなくなって、
聞こえなくなって、
後悔するときは、いつだって遅いんです。
関連記事
-
カラダと仲直りする。
“30 Days of yoga”というYoutubeの …
-
めんどくさいけど大事な「呼吸の話」その2
さて、前回お話しした呼吸の話のつづきです。 今日もマニアックにお届けします(^^ …
-
ビブラートのかけ方ぁ〜!?
ビブラートのかけ方などというものをはじめて意識したのは、 『これなら歌える!ボー …
-
カツゼツッ!!!
普段はほとんど興味のないテレビですが、 さすがに昨今、 ニュースくらいは見ておか …
-
「いい声が出ない」には、いつだって理由がある。
歌うというのは、カラダの中と外を繋げる作業。 少しスピリチュアルな言い方をすれば …
-
ボイトレにストレッチって、必要ですか?
ボイトレをはじめると、必ずと言っていいほどやらされるのがストレッチです。 やれ「 …
-
やっぱ、最後はエネルギー。
歌の指導をしていく中で、 心がけているのが、 感覚的な説明に終始したり、 精神論 …
-
仮死状態の筋肉をたたき起こす
ボイトレというと「ストレッチをさせられる」というイメージがある人が、 多いのでは …
-
鳴らない楽器と鳴らせないプレイヤー
輸入物の下着の値段を見て、 ひっくり返りそうになったことのある女子なら、 「洋服 …
-
「風邪は引かないことにしています」
長年アニメのディレクターとしてお仕事をしている姉が、 高校生の頃、父の学生時代の …
- PREV
- ちゃんと仕事しろっ!
- NEXT
- センサー、壊れちゃったんですね。