大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

ちゃんと仕事しろっ!

   

NYに住みはじめて、
寮の自分の部屋に電話を引き込むため、
電話会社に出向いたときのことです。

まぁ、日本なら・・・

「いらっしゃいませ。」
「番号札をお取りになって、あちらでお待ちください」
な〜んて感じでにこやかに出迎えられ、

無料のお水のサービスや、
時間つぶしのための雑誌閲覧サービスなどなどで、
気ままに、快適に、待ち時間を過ごし、

順番がくると、丁重にカウンターに呼ばれ、

「大変お待たせいたしました」

からはじまって、

こちらがどんなにとんちんかんな質問をしようとも、

にこやかに、一所懸命、忍耐強く、
対応してくれるのが、まぁ、当たり前。

 

もちろん、私だって、
日本のような至れり尽くせりのサービスを
期待していたわけはありません。

 

ありませんが・・・・

 

電話会社のドアを一歩入ったら、そこは長蛇の列。

そして、カウンターに座った、
いかにも不機嫌そうな黒人の女性が、
ほおづえをついたまま、
イライラと、顧客が記入した申込用紙をチェックして、

ささっと読み終わると、

次の人を指さして、
例の「カモン」のジェスチャーで、
これでもか、くらい感じ悪く、

「Next!」と叱りつけるように呼んでいるのです。

なんか悪いことをして、
順番に呼び出されているかのような雰囲気です。

 

こちらは、もう何がなにやらよくわからないので、
とりあえず列に並んで、
おとなしく順番を待つだけ。

ややあって、その女性に呼びつけられ、
おずおずと申し込み用紙を差し出すと、
わからなくて空欄にしておいた、
用紙のブランクを指でとんとんと叩き、
いかにも苛立ったようすで、
「ここにも書くのよ!」とおっしゃる。

慌てて、その場でペンを出して書こうとすると、

「もう一回後ろに並んで!」

その不親切きわまりない対応は、
実に頭にきましたが、
まだ英語もちゃんと話せなかったときのこと。
文句も言えず、おとなしく並び直しました。。。

 

さて。

冒頭からエキサイトして、だいぶ脱線しましたが・・・
今日のテーマは、「仕事」。

 

 

お金をもらって仕事をする人は、3種類に分類されます。
お金をくれる人の期待通りの仕事が充分にできない人。

いただいた金額に見合う仕事をきっちりこなす人。

金額以上、期待以上の仕事をする人。

 

もちろん、仕事はあくまでも仕事ですから、
期待された以上の仕事をしなくてはいけないとは申しません。

働く人の善意に甘えてしまう経営者も多い世の中ですから、
いただいた金額に見合う仕事をきっちりする、
期待された役割をきっちりこなせば、
とりあえずは充分です。
 

問題なのは、この「きっちり」の意識。
 
お金を払う人は、
自分の何に対してお金をくれているのかを、
きちんと理解することなしに、
「きっちり仕事をこなすこと」はできないはずです。

 

若かりし頃、バイト先で、
お店に来るなり、競馬新聞を広げて、競馬の予想をしている子や、
お化粧を直したり、私用の手紙を書いたりしている子がいて、

「そんなことしてていいの?」

と聞いたら、

「俺らは店番なんだから、
お客がいないときは何してたっていいのよ」

と言われ、なんだかむかむかしたことがあります。

ちなみに、彼らは2人とも正社員でした。
今思えば、経営者や上司の教育の問題、
もっと言えば、人事の問題でしょうから、
一概に彼らばかりが悪いとは言えませんが、

お給料をいただいたり、
時給で働いている人間は、
自分の時間を売っているわけで、

就業時間中は自分の時間ではない、
という意識を持つのは当たり前。

掃除でも、片付けでも、
探せば仕事はいくらでもあるはずです。

 

実は、「いただいたお金に見合った仕事」という意味を、
きちんと理解できていない人が、あまりに多い。

 

例えば、冒頭の電話会社のレセプション。

順番に申込用紙を受け取って、
記入漏れをチェックするのが彼女の役割として、

彼女の対応があまりに不快で、
他の電話会社に鞍替えする人が出てきたとしたら、
彼女の対応は会社に損失を与えることになります。

しかも説明が不親切で、効率が悪い。

何度も並び直す人が出てくるということは、
時間のロスも、手間のロスも大きいはずです。

ちょっと仕事の仕方を工夫するだけで、
効率は大きく変わります。

職場の雰囲気もよくなり、顧客の満足度もアップする。

いただく金額には、
単に「仕事をこなす」以上の期待があるのです。

 

例えば、トレーナーでも、講師でも、

お金をいただいて、
いただいた時間の長さだけ、
自分の知識やノウハウをシェアする、
というのが自分の仕事であると考えている人が、
あまりに多い。
しかし、トレーニングなり、
レッスンなりを受ける側は、
教える側の時間や労力に対して、
お金を払っているのではありません。

 

お金を払うのは、
「結果を期待するから」であり、「自信をつけるため」。

結果が出せないどころか、
受講生の自信を奪うようなトレーニングやレッスンをして、
偉そうにしている人なんて、
(残念なことに、まだまだたくさんいるようで、
聞く度にムカムカするんですが)
言語道断なわけなのです。

 

「きっちり仕事をする」。
想像力を働かせて、
自分の仕事はなんなのか、
期待されていることはなんなのか、正しく理解すること。

 

まずは、そこからです!

58319436 – businesswoman under stress working in the office

 - Life, ヴォイストレーナーという仕事

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