大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

耳で聞くのではない。脳で聞くのだよ、明智くん。

   

少し前、まずオケを聴け!歌うのはそれからだ!という記事で
歌のピッチやリズムが悪い人は、オケが聞けていないのだというお話をしました。

 

レッスンでも、オリジナルの音源を流して、

「はい。ハイハット聞いて」

「ベースの音、声でなぞって」

などということをさせることがあります。

 

しかしです。

 

実はこの、
「オケの中から、特定の音だけを拾い出して聞く」というのが、意外に難しい。

 

こどもの頃から楽器をやっていたり、聴音をやっていたり、
はたまた英才音感教育のおかげで、絶対音感を持っていたりという人には、
全くもって理解出来ないことかもしれませんが・・・

聞こえないものは聞こえないのです。

 

私自身、音楽の英才教育とは無関係の環境で育ったせいか、
音楽家を志してから、もっとも苦しんだのは、「耳が悪い」ことでした。

 

オケは、「オケ」というダンゴの状態でしか耳に入ってこない。

キーボードやギターのコードの構成音はおろか、

ベースの音でさえよく聞こえない。。。

 

仕事をはじめるようになってからは、モニターでもずいぶん悩みました。
誰かとユニゾンで歌っていると一切自分の声が聞こえなくなる。

ハモっているはずなのに、自分の声がどちらだかわからなくなる。

その結果、ライブでも、レコーディングでも、音を外しまくっていました。

 

さて、こういう人をミュージシャンの間では「耳が悪い」というわけですが、

 

実際に聴力に問題があるわけではもちろんありません。
聴力検査で悪いスコアが出たことは一度もありません。

なのに、一体全体なぜ聞こえないのか。

 

 

はい。音は空気の振動です。

空気の振動が鼓膜を振動させ、電気信号に変換し、脳に伝える。
そして、どんな音かを認識するわけです。

 

 

 

鼓膜の機能に、ある程度の個人差はあると仮定しても、
振動が伝わるのは、あくまでも物理的な現象ですから、
誰の耳だって、平等に振動しているはずなのです。

 

 

そう考えると、特定の楽器を聞くというのは、「耳の焦点」をあわせること。

耳にはもちろん、目や声帯のような、
ピント調節機能がついているわけではありません。

 

脳が聴きたい音に焦点をあてて、音を拾っているだけです。

 

苦手な人は、可能なら、聴きたい音の音量だけをぐいっと上げてみる。

ボーカリストなら、耳栓をしてみるのも有効です。

 

一度、聞くべき音を捉えられると、何にピントを合わせるべきかがつかめます。

それから、もとの音量に徐々に戻していけば、
だんだんと、お目当ての音がくっきり聞こえてくることに気づくはずです。

 

 

いかがでしょう?

苦手な人は、早速練習してみてくださいね。

14664495_s

 

 

 

 

 

 - 「イマイチ」脱却!練習法&学習法

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

  関連記事

「なぜだろう?」の先に、進歩がある。

「なぜだろう?」   楽器も歌もパフォーマンスも、いや、おそらく、どん …

「なに聞いて歌ってんの?」

「なに聞いて歌ってんの?」 ワークショップや授業で生徒たちの歌を聞いた後、 よく …

歌を学ぶ人の3つのステージ

私は歌を学ぶ人には、 3つのステージがあると考えています。 ひとつめは楽器として …

勘違いか?わかってないのか?はたまた、なめてるのか?

ライブでもレコーディングでも、 いや、リハーサル、または実技の授業などであっても …

「どうやったらできるか」じゃなくて、「どうやったらなれるか」。

「どうやったらできるか」が知りたいのは、 真面目に学ぶ気のある人のお話です。 た …

歌っている自分を直視できない?

歌っているところを動画に撮る。 こんな宿題を出すことが多々あります。 自分を客観 …

人はアウトプットすることで成長する

「学ぶ」といえば、本を読んだり、音楽を聴いたり、人の話を聞いたりと、 インプット …

「ジャストフィット」を探せ!

初めて手に入れたギターは、ピアノのおまけにと、 お店の人がサービスでつけてくれた …

鏡を見ない!?

何年か前、女優の黒木瞳さんが、 その美しさの秘訣を聞かれて、 家では鏡を見ない、 …

バンドとカラオケは全然違うっ!

カラオケ育ちの若者たちは、バンド内のコミュニケーションが実に苦手です。 &nbs …