大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

日本語の発音とリズム感の関係

      2016/06/05

歌のリズムがよくならない。
どうも、ビートが気持ちよく出てこない・・・

どんなに練習しても、リズムがしゃきっとしない原因のひとつに、
日本人独特の発音のクセがあります。

歌のビート感を出すためには、
ことばをくっきりと発音してビートを表現することが必要なのですが、
日本人は、この「くっきりと」発音することが苦手なのです。

最大の原因は日本語のことばの特性にあります。
日本語の場合、ほとんどのことばが母音単独、
または子音と母音のワンセットで発音されます。

ことばをはっきり発音しようというときに、
よく「口を大きく開いて」と言われますが、
そこで、矯正できるのは母音の発音でしかありません。

ところが、歌のビートは歌い出し、一瞬の瞬発力が勝負。
母音は子音の後に出てくる音ですから、
母音を意識してもビート感は改善されないのです。

子音は出ようとする空気の流れを一瞬妨げることで作り出される音。
舌や、歯、軟口蓋、喉などで、
一瞬空気が止められた後に解放される音や、
摩擦によって作られる音などが子音です。

この子音をくっきりと発音できるように練習するしか、
歌のビート感を改善する方法はありません。

この場合、注意しなくてはいけないのは、
子音の発音練習をしているつもりで、どんなに一所懸命、
「かけきくけこかこ」とやっていても、
強く発音できているのは母音である場合がほとんどであるという点です。

練習すべきなのは「K」であり「G」。つまり純粋な子音の部分です。

16437396_s

強く発音するためには、話す時に日常的に使っている舌の位置を
見直す必要があるかもしれません。
特に、KやG、TやDなどの発音がうまく行かない人は、
舌が軟口蓋に近づいているポイントや、
歯の後ろについているポイントを見直してみましょう。

最も硬質な、鮮明な音になるところを探して、徹底的に鍛えましょう。

また子音の発音は「強く言おう」と意識するよりも、
「子音に時間をかけよう」という意識をする方が有効です。

「か」をKAと意識するときに、Kにかける時間を一瞬だけ長くするイメージなのです。

これらを意識するだけで、ずいぶんビートが立ってくるはずですよ。

 - 「イマイチ」脱却!練習法&学習法

  関連記事

「誉めて!かまって!」症候群

誰かにかまわれたい、 誉められたい、 認められたいという欲求は、 人間である以上 …

とにかく歌う。毎日歌う。それを続ける。

生まれて初めて包丁を持つときは誰だって、 なんのことはない作業、 例えば、単に「 …

お前の主観はいらんのじゃ。

人が音楽や歌をジャッジするポイントは、 大きく分けて3つあります。 1つめは「正 …

「なに聞いて歌ってんの?」

「なに聞いて歌ってんの?」 ワークショップや授業で生徒たちの歌を聞いた後、 よく …

no image
歌の構成要素を分解する〜ラララで歌う〜

大好きな曲を、オリジナルを歌っている歌手と一緒に歌う。 何度も、何度も、繰り返し …

リズムの「点」に意識を向ける

リズムのある音楽には、必ず「点」がある。 これが、私の解釈です。   …

「ちゃんと聴く」技術。

自分の歌って、ぶっちゃけどうですか? いきなり、そんな質問をされることが、よくあ …

歌の「点」、ビートを意識する。

ドラムにビートがあるように、歌にもビートがあります。 ビートの意味は、いろいろな …

カバー曲の歌唱にオリジナリティをプラスする3つの方法

「オリジナリティ」と「クセ」は紙一重です。   「オリジナリティあふれ …

「とにかくやる」

「やりたくないときほど練習をすると、やってよかったと思えるわよ」   …