精度の高い”フォルティッシモ”を持て!
2024/02/17
ダイナミクス、すなわち音量の強弱のコントロールが
音楽表現の大切な要素であるということは、
音楽を学んだ人なら誰もが理解していることです。
しかし、実際にこの強弱表現が効果的に、
確実にできるシンガーというのは、なかなかいません。
音域が高くなると急に音量が上がる。
そのくせ肝心なところになるとひっくり返ったり、
裏声になったりして、いきなり音量が下がる。
低音になるとこれまた急に小さな声になる。
音量を下げようとすると、蚊の鳴くような声になって聞き取れない。
クレッシェンドが今ひとつ伸びない。
デクレッシェンドの途中で声が途切れる…etc.etc.
「そもそも、一定の音量で歌えない」というのは論外ですが、
こうした音量表現の苦手な人の特徴として、
「精度の高い”フォルティッシモ”を持っていない」というのがあります。
どういうことか。
フォルティッシモとは、
「とても強く」という強弱記号のことです。
とても強い音というのを、
確実に、高い精度で歌う事ができなければ、
強弱表現は思うように伝わらないのです。
ちょっと難しいでしょうか。
光で考えてみてください。
光の強さ調節の目盛りが3までしかなかったら、
どんなに繊細に光の強さを変えてみても、
受け手にはなかなか伝わりません。
おなじ空間に、より明るい光が輝いていたり、
目盛りが10までついている調光器を備えた光があれば、なおさらです。
音に話を戻せば、
一緒に演奏している楽器の強弱表現の方が、
確実に歌に勝りますから、
歌の表現は演奏の表現に埋もれてしまうわけです。
もちろん、大きい声が出ればいいということではありません。
どの音域も、安定感のある音色で、
一定の音量で歌えることが前提です。
その上で、メロディの最初から最後まで、
しっかりとフォルティッシモで歌いきることができるかどうか。
練習は、まず、すべての音域を、安定感のある、
心地よい音色と一定の音量で歌う練習をすることからはじまります。
(この練習は、歌のトレーニングの基本中の基本なわけですが。)
キー設定を見直す必要や、
声のチェンジのポイント、
共鳴ポイントなどを見直す必要もあるでしょう。
徹底的に声の安定感を上げること。
これが、まず最初のゴールです。
安定したところで、音量を上げていきます。
実際、学生たちのパフォーマンスの後に、
「今、何割くらいの声で歌ってる?」と質問すると、
「3割〜4割ぐらいです。」という答えが返ってくることが多くてびっくりします。
どんなにラウドな声を持っていても、3割では「鳴らしていない」に等しい。
まして、元々蚊の鳴くような声なのに、
3割なんかで歌っていたら、一生上達しません。
安定した、美しい声で歌えるなら、
音量を上げる練習はどんどんしても大丈夫です。
発声は筋トレです。
声量をつけたければ、大きな声で歌う練習をするしかありません。
大きい声を出して、ノドを痛めるのは、発声が悪いからです。
疲れたら休んでください。
不調を感じたら、そもそもの発声を見直してください。
精度の高い”フォルティッシモ”を持つ。
これが可能になったら、表現の幅は圧倒的に広がりますよ。
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