大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

マンツー vs. グループレッスン

   

「歌のレッスンはマンツーマンじゃなくちゃ」とは、
非常によく言われることです。

ひとりひとり、歌い方はみんな違うから。
10人いたら、教え方は10通り。

ダイナミックなスタイルで歌う子なら、
よさを伸ばしつつ、精度を高め、
緻密なテクニックを身につけさせる指導をする。

ポップなか弱い声が魅力の子なら、
か弱さの中に芯を育てたり、
独特な歌のニュアンスを共に構築したり。

目の前にレコーディングや、
コンサートツアー、メディア出演などが
差し迫っているアーティストたちならば、
本番に向け、
それぞれのスタイルやウリを最優先に、
曲の細部の歌い回しや声のニュアンス、
歌詞の表現方法までをもアドバイスし、
ベストオブベストを引き出します。

時に、デリケートな心身のケアに
心を配ることもあります。

 

アーティストの場合は、
プライバシーの問題もありますし、
レッスンはマンツーマン=プライベート・レッスン一択です。

 

しかし、歌の上達を目指すなら、
マンツーマンレッスンだけが
ベストな選択とは限りません。

歌を上達するためには、
自分で自分の歌をジャッジする能力の習得が不可欠です。

そのために大切なのは、
自分の歌を客観的に聴く能力を磨くことと、
基準を育てること。

自分と向き合ってくれる「先生」という存在ではなく、
一緒に学ぶ「同士たち」が自分の歌をどのように聞くのか。
どんな印象を持つのか。

「同士たち」は何を感じて、
どのように取り組んで、
どんな風に歌っているのか。

関わる人数が多いということは、
さまざまな情報が飛び交うということでもあります。

人が歌う曲を聞いて、新しいジャンルに目覚めることもある。
誰かの歌い方がカッコいいと感じて、マネしてみたくなることもある。
普段の練習方法や、練習時間、練習場所、メンバーの見つけ方、ライブの情報、ライブハウスの情報、スタジオの情報…etc.etc…

そんなたくさんの情報に刺激を受け、
ますます上達していくのです。

また、「人の目」が多いほど、緊張感は高まります。

自分自身を試すためにも、
実力を上げるためにも、
音楽におけるコミュニケーション力を養うためにも、

いつも自分に目線をあわせてくれる「先生」以外の存在を意識することは非常に有益です。

また、同じ道を志す仲間たちとの交流ほど、
高揚することはありません。

マンツーマンにせよ、グループにせよ、

問題は、
「明確なメソッドのないレッスンは、
部活動のようになってしまいがち」ということ。

毎週通って、先生や友だちと会って、
楽しい時間を過ごして・・・

というレッスンは、
趣味やサークル活動を求めていらっしゃる方には向いていますが、真剣に上達したい方には物足りないでしょう。

ロジカルで、体系化されたメソッドがあること。
クリアすべきゴールが明確にあること。
進行に応じて適確な課題を与えられること。

歌を志す人たちが本当に求めているのは、
「一生通うスクール」ではなく、
確実に結果を出せる、
「コンサルティング」であり「コンテンツ」。

若かりし頃の自分なら、
のどから手が出るように欲しがるであろう、
そんなメソッドを作っていきたい。
そんな風に考えています。

◆基礎力がないわけではないのに、歌の評価が上がらない。思うようにキャリアアップできない。ワンランク上の世界で認められない・・・。そんな悩みを抱えて歌に取り組んでいるシンガーのためのスーパー・ワークショップ“MTLネクスト”、始動。

◆第9期MTL12の日程が決定しました。
4月11日(土)、4月25日(土)、5月9日(土)、5月23日(土)、6月6日(土)、6月20日(土)
詳細は近日お知らせします!

◆メルマガの無料登録はこちらから。

 - B面Blog, 「イマイチ」脱却!練習法&学習法, ヴォイストレーナーという仕事

  関連記事

声を伝えるのに必要なのは「デリカシー」。「気合い」じゃないんですよ。

音の波形ってみたことありますか? 音は空気の振動。 特殊な装置をつかうと、 その …

「カッコいいもの」と、それ以外

音楽学校などで、 「この曲を練習してきて」と課題曲を渡すと、 「この通り歌わなく …

「これは私のスタイルじゃないから」

ずいぶん昔のことになります。 とある音楽制作事務所の年末パーティーで、 作詞家だ …

プライベートか?グループレッスンか?

「歌はプライベートレッスンでなければ上達しない。」 長年、そう言われています。 …

練習場所が欲しい!

最近の高校生は、学校でバンド練習とかするのでしょうか。 高校時代、授業が終わると …

A rock singer performing with powerful voice — Rock Voice Grows Through Experience, Not Knowledge.
ロックな声は、“知識”じゃなく“体感”で育てる

ロックと言えば、バッキーンと突き抜ける高音。 そして、ハスキーボイス。 昨今、さ …

ルーティンワークで「微差」をつかまえる。

鰻屋を営んでいた母方の祖父は、 生前、お昼ごはんに、 毎日お店の鰻重を食べていた …

「フィルター」をぶっ壊せ

ティーンエイジャーの頃、 とにかくテレビに出ている「タレント」や「アイドル」 そ …

「わかることばで教えてください!」

音楽業界に長くいるほど、 どこまでが専門用語で、どこからが一般のことばか、 これ …

情報処理のスピードを上げる。

遠〜い昔。 小学校時代の親友に、とってもよくお勉強ができる、 某有名私立中学に一 …