大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

鏡を見ない!?

      2022/12/25

何年か前、女優の黒木瞳さんが、
その美しさの秘訣を聞かれて、

家では鏡を見ない、
家にはほとんど鏡がない、
というようなことを言っていて、

うっそぉ〜、
そりゃ、そんな顔してりゃ、
それでいいかもしれないけどね・・・
と突っ込み倒した記憶があります。

鏡を見ない生活を数日するだけで、
とたんにいろんなことが劣化する私は、
いかにも意識が低いということなのでしょうか。

 

そういえば、少し前、
とある舞台女優さんのレッスンで、
「お稽古のビデオを見るときは、
姿勢や表情を特にしっかりチェックして。」
と言ったところ、

「以前、演出家さんに自分の芝居は録画するな、
と言われたことがあって・・・」と言っていて、

へー、そういうものかと、
思わず「なんでやねんっ!」と突っ込みそうになる、
自分の右手を押し戻したこともあります。

もちろん、演出家さんとしては、
感情をつくるな、体感でわかれ、
表面的な表現をするな、
というような意図あっての指示なのでしょうが、

それでどうやって、
自分の表情や動きの「型」をよくするんだろうなぁと、
しばし考え込みました。

 

「いい型」をつくれる人は大まかに分けて、

1.よくわかった、センスのいい師匠がいる
2.  自分で自分のやっていることの精度がきちんとわかり、
修正できる知識もセンスもある
の2種類しかいません。

前者は歌舞伎やお能や、
クラシック音楽、バレエなどの伝統芸能の世界。

後者は、生まれながらの天才か、
とことん自分を追い込める「オタク」な人たち。

 

この中のどれにも属さない人は、
やたら個性派とか独創的と言われる天才系か、
何年やってもイマイチなままの残念な人たち。

鏡は見ない、録音も録画もしない、
イケてる師匠がいるわけでも、
とことんこだわるオタクというわけでもない・・・

それでも、自分のやっていることの精度がわかって、
ぐいぐい伸びていけるくらいセンスのいい人は、
まぁ、きっとこのブログは読んでいないでしょうから、

あえて、声を大にして言うならば、

才能にも環境にも恵まれなくても、
時間と情熱だけは、誰にだって平等に与えられる。

だからこそ、それをケチることなく、
やれることはなんだってやる。

つかえるものは、誰だって、どんなものだってつかう。

何を言われたって、とことん、
自分で徹底的に納得できるまで、
向き合う。取り組む。やり倒す。

こだわって、こだわって、こだわり抜く。

結局、そんな泥臭いことを
やや楽しめるくらいのマインドがないと、
頭ひとつ抜きんでられないんじゃないかと、
鈍才代表の私は、心の底から信じています。

一生ヴォイストレーナーのいらない自分になる。第8期MTL12、10月開講
第8期ご予約で、無料で参加できるダイジェスト版は残席わずか。

 - 「イマイチ」脱却!練習法&学習法

  関連記事

いい歌は左脳を麻痺させる。

ものすごくうまいのに、ものすごく退屈な歌、というのを、 たくさんたくさん聞いてき …

未来を切り開くのは、ひらめき、学び、そして自信。

ひらめきは突然やってきます。 「あ!今、これ、やっといた方がいいわ。」 「おぉお …

それで、いい声、出せますか?

先日、とある生徒さんのレッスンをしていた時のこと。 ずいぶん小柄な彼女なのに、 …

腰が硬い人はリズムが悪い!

以前教えていた音楽学校で、 「演奏中の動きがぎこちない学生が多い」という話になっ …

立ち止まるな!学び続けろ!

インスタライブ、Facebookライブ、 リール投稿にストーリーにYouTube …

解像度を上げろ!

歌で伸び悩んでいる人や、思ったように評判が上がらない人に、真っ先に疑って欲しいの …

「曲の可能性」をありったけ取り出す

大好きで、よく引用することばに、 世紀の名ピアニスト・ホロヴィッツの 「楽譜は紙 …

知っていること vs. わかること vs. できること

知っていることと、わかっていることの間には、大きな溝があります。   …

作業量の多さにひるまない

英語を勉強しはじめたとき。 英語の辞書の重さをずっしり感じながら、 「こんなにた …

同じ音を、同じ音色、同じ音圧で、 100発100中で出す

人間のカラダは「まったく同じ音」を2回以上出すことはできない楽器。 そんなことを …