大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「リズム感がない」なんてことばをつかわない!

      2016/06/05

レッスンの話をもっと書きたいと思っていても、
なんだか、生徒やクライアントさんの秘密をばらす気がして筆が進まずにいたのですが、
昨日、突然外人名の仮名で書いてみたらすらすらと書けたので、
これからはこの手法でしばし更新していこうと思います。
今日は大学で学ぶジェーン(もちろん仮名!)のレッスンの時のお話。
「この間の授業で、マーク先生に、(当然仮名!)『キミ、リズム感ないね』って言われたんです」

そこで歌わせてみると、確かにうまくリズムがはまっていない。
演奏と歌がずれるのです。

ここでハッキリさせておきたいのは、こうした場合、99パーセントが「リズム感が悪い」のではなく、
「リズムのハマリをわかっていない」だけなのです。

「リズム感がない」、「音感がない」というのは、
ついつい使ってしまいがちなことばだけれど、
そこには個人の能力を否定する、どうにも絶望的なニュアンスが感じられます。

わかっていないのなら、わかるまで、
音を何回も聞いて、歌詞を当てはめてと、
頭や時間や労力を使えば、たいがいなんとかなるものです。
「わかっていない」は、まだまだがんばれる余地があるということばなんです。

ちなみに、「リズム感がない」と言われる子に、
歌のテンポを半分くらいまで落としてゆ〜〜っくり歌わせると、
「あれ?この音、どこに入るんですか?」と、
メロディーのハマりが理解できていない箇所が多数現れます。

ジェーンのケースも同じ。
しっかり、この音はリズムの中のどこにはまっているのか、
ドラムをもう一回聞いてごらん。
どの楽器のどの音と、同時に歌えばいいの?
などと確認させているうちに、あら不思議、
ぴたりとリズムがはまって歌えるようになりました。

生まれながらに、4ビートも8ビートも16ビートも完璧に、
ピタリとリズム通りに刻めるような天才のことは忘れてください。

まずは頭でわかる。
カラダに入れる。
感性はそうやって磨いていくものなんですぜ。

Alright,Jane?・・・ってだれ?(^^))

 - 「イマイチ」脱却!練習法&学習法

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


  関連記事

「できないことをできるように」から「できることをもっと素晴らしく」

先日、ディスカヴァーさんが、メルマガで拙著の紹介をしてくれていました。 「自分も …

歌も演奏も一瞬で上達する華麗なる方法

長年にわたり、音楽学校や音楽大学で、 学生のアンサンブル授業を担当してきました。 …

「曲の可能性」をありったけ取り出す

大好きで、よく引用することばに、 世紀の名ピアニスト・ホロヴィッツの 「楽譜は紙 …

音なき音楽をキャッチする

歌や音楽を学びたい、極めたいと思うとき、 ついつい、音楽のことばかりを考え、 ま …

「自分のことば」になってない歌詞は歌えない!

役者さんがしばしばつかうことばに「セリフを入れる」というのがあります。 この「入 …

「たった1曲しか歌うチャンスをもらえないとしたら、 なにを歌う?」

「たった1曲しか歌うチャンスをもらえないとしたら、 なにを歌う?」 アーティスト …

オリジナリティは模倣から生まれる

オリジナリティって、どんなことをいうのだろう・・・? そんなことを考えています。 …

コツコツ積み重ねる微差が、逆転勝ちを演出する

自分の生まれは選べません。 生まれたときから、才能やルックスや音楽環境に恵まれて …

記憶に残る「デキるやつら」は一体何が違ったのか?

かつて、教えていた音楽学校では、ヴォーカルの授業を 定期的にインスト科の生徒たち …

で?なにがやりたいわけ?

高校時代、多重録音というものへのあこがれが高じ、 ラジカセをふたつ向かい合わせに …