「自分のことば」になってない歌詞は歌えない!
役者さんがしばしばつかうことばに「セリフを入れる」というのがあります。
この「入れる」というのは、
単に「セリフを覚えている」というレベルではありません。
「自分のことばになっている」という意味。
では、「自分のことば」とはどんなものかといえば、
例えば、何かを触って、熱いと感じた瞬間に、
「あっちぃ〜〜〜っ!」と声に出る。
理不尽なことを言われた刹那、「はぁ〜〜!?」と言ってしまう。
そんなレベルの、感情と完全に繋がったことばのことではないか。
台本のト書きに、
(あまりの熱さに飛び退いて)とあるからでも、
(驚いて)とあるからでもなく、
自分の感情や思考をオープンにして、その状況に反応する。
対応する。
それが「自分のことば」なわけです。
歌詞が覚えられないのは、意味をわかっていないから。
というポストでもご紹介したように、
英語であれ、日本語であれ、
歌詞の意味をわかっていないことばが歌えないのは当然のこととして、
さて、この、「歌詞が入る」レベルまで、準備できるかどうかが、
単なる、「精度のいいパフォーマンス」を、
深みや味わいのある、さらには、芸術的なパフォーマンスに、
昇華できるかどうかの大きなポイント。
もっというと、
技術を売る「ヴォーカリスト」から、
歌で人を感動させる「アーティスト」のレベルへ、
自分の芸を高められるかどうかの分かれ目と言えるのです。
もちろん、歌詞の内容のすべてを体験したことがあるとは限りませんから、
どう感じたらいいのかわからない、
どう解釈したらいいのかわからないことも、多々あるでしょう。
しかし、それを言い出したら、
死んだこともない俳優が、今際の際を演じたり、
虫も殺せないような人が、連続殺人犯を演じたり、
無神論者が、神父の役を演じたりすることも、不可能になってしまう。
名優たちは、だから、
自らの経験から生まれた感性と、未知の感覚とのギャップを
取材と研究と想像とで埋めていくのです。
人生経験を踏むほどに、演技の味わい、歌の味わいが深まるというのも、
さまざまな感覚をリアルに取り出せるようになるからに他なりません。
いやぁ。修行です。
一生ね。
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