聞いてるつもり。できてるつもり。がんばってるつもり。
2020/02/20
「え?ホントにそんな風に聞こえるの?
なんでそんな風に聞こえるかなぁ・・・・」
出会ってしばらくして、
ジェフ夫さんの前で得意になって、
ジェフ・ベックの曲を弾いた時に言われた、
一生忘れないことばです。
実に不思議そうに、自然なようすでそう言った、
ジェフ夫さんは、
私からギターを受け取ると、
今、まさに私が弾いて聞かせた曲を、
悔しいほど華麗に、演奏して聞かせてくれたのでした。
「これでしょ?」
・・・いや。だから。
あたしだって、そう弾きたかったけど、
まだうまく弾けないだけで・・・。
「そういう問題じゃないなぁ」。
すみませんが、もうちょっと、
冗談めかしてとか、
なんなら意地悪そうにとか、
言ってもらった方が、すっきりするんですけど。。。
なんだろ。その天然な感じ・・・。
高校時代から、
耳にタコができるほど聞いてきたジェフ・ベックの名盤中の名盤の、
これまた名曲中の名曲。
譜面を買って、練習して、
全然、弾けている気になっていたイントロ。
「あたし、ちゃんとタブ譜で練習したもん」。
「ああ。ああいうの、ウソクソだからね。
自分の耳でちゃんとコピーしないと」。
いやいやいやいやいやいや。
だから、自分の耳でコピーできないから、
譜面って買うんでしょうがっ!
「だからさ、たぶん、譜面書いてるヤツもわかってないから」。
耳が悪いから、ちゃんとコピーできない。
弾けてないのに、ちゃんと弾けてる気になる。
弾けてる気になって、満足して、できたって思う。
こんなレパートリーを何十曲、何百曲持っていたって、
あぁ、やっぱり残念。
どうしてみんな、認めてくれないんだろう?
こんなにがんばってるのに、なにがダメなんだろう?
だって、できている人と自分の違いが決定的に聞こえてこない。
聞こえない違いは、どんなに考えたって、やっぱりわからないんですね。
歌の世界も同じです。
ダメな人ほど、自分のダメなところがわからない。
だからダメなのに、ダメだと思ってないから、
人の意見にさえ耳を傾けられない。
なんなら、ダメというこちらがわかってないのだと、
なんだかんだと理屈をこねくり回して自己防衛する。
オーディエンス無用の世界で演奏をするのなら、
どんな音楽的秩序もいりません。
しかし、ピッチもビートもグルーヴも、音色にさえも、
生理的なレベルで「心地よい」が存在する以上、
自分自身の耳をふさいだ状態で、
聞く人の心をとらえる音を出すことは、
やっぱり不可能なのではないか。
大事なのは認める勇気。
「無知の知」です。
目を開いて。
耳を澄まして。
そして、周囲に心を開いて。
自らの耳を補ってくれる誰かを探す。
その人の声に心を傾ける。
知る。認める。信じる。
逃げずに立ち向かう。
音楽って、やっぱり「人」なのだ。
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