人はみんな、違うのだ。だから、おもしろいのだ。
音楽というのはある種のトリガーで、
サウンドやフレーズや声が
感情とか記憶とか、
普段は意識することもないような感覚とかを、
バキュンと呼び覚まして、
人の心に大きな影響を与えるもの。
受け手によって、だから、
音楽から受け取るものは全然違うし、
好きな音も、心地よいサウンドも、全部違う。
「これを聞け」とか、
「あれは聞くな」とか、
なんなら「そんなの聞いてるからダメなんだ」という議論は、
まったく無意味なわけです。
同じものを聞いていても、
そこから取り出している情報が全然違う。
わかってないのは、
他人様の好きな音楽を
「わかってねぇな」「そんなもの・・・」と、
口を挟むヤツの方なんですな。
時代がどんどん進んでいくと、
情報入力したとたんに、OSが古すぎてフリーズしてしまうPCよろしく、
思考停止が起きてしまうような音楽と出会うことも多々あります。
甥っ子が高校生くらいのときのこと。
久しぶりに一緒に出かけたら、
甥っ子が楽しそうにイアフォンで音楽を聴いています。
おぉ、甥もついに音楽が好きになったか。
ロックでも聞いてるのかな?それとも歌謡曲?と
興味津々で「ちょっと聞かせて」とイアフォンを受け取ったら、
電子音のゲームミュージック・・・。
思わず思考停止して、
イアフォンをそのまま甥っ子に返したことがあります。
「すっごい興奮するんだよね」
「気合い入るんだよね」と言う甥。
私も高校時代、
音楽を聴いては、そんな風に言ってたな・・・
ただそれがハードロックで、
ツェッペリンで、ジェフ・ベックだっただけだよな。。。
甥の頭の中では、
その電子音が何かのトリガーになって、
彼の感情を刺激するわけで。
人間って、音楽って、本当に面白いなと、
考えさせられたできごとでした。
少し前に、とあるクラシック・ミュージシャンの方とお目にかかって、
取り巻きの方に、
自己紹介をしてくださいと言われたことがあります。
まいったなぁと想いながら、
「ロック・ヴォーカルを教えています」と言ったときの、
周囲の何とも気まずい空気。
ある種の宗教団体に、
異端のものが紛れ込んじゃったみたいな、
居心地の悪さを感じたものです。
ひとことで「ロック」と言っても、
トリガーサウンドは、みな違いますから、
「やっぱメタルよね」とか、
「キミは商業系かぁ」とか、
「古いですねー」とか、
「パープルよりゼップ派なんで」とか、
「80’sはなぁ」とか、
みんな微妙に違って、何ともめんどくさい。
そして、それが、なんとも楽しい。
昨年、ロンドンの友だちの家で、
「みんなのベストソングを順番に流そう」と誰かが言い出して、
うんと年上の友人たちが、
聞いたこともないような、
古いイギリスのシンガーの曲を次々と流しては、
「マーベラス!」とか「ブリリアント!」とか言っているので、
私だって!とポール・マッカートニーを流そうとしたら、
もう信じられないくらいの非難囂々、大ブーイング。
あんまりうるさいんで、
「はっきりいって、君たちの聞いてる音楽は、
あたしには単なるクラシックのフォークソングだから!」と言ったら、
お前はわかってない。
ポールマッカートニーだなんて、
よくもそんな恥ずかしいことを言うなぁなどと、
口々に馬鹿にされて、
もう知らん!とひねくれた、楽しい思い出があります。
音楽は人なり。
みんな違って、だからおもしろい。
人がそこにいるからこそ、
音楽に意味が生まれる。
深いですな。どこまでも。
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