大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

国語力、お願いします!

   

歌を教える仕事をしていて、
最もフラストレーションを感じるのは、

生徒がなかなか上達してくれないときでも、
やる気がない生徒を教えるときでもありません。
生徒が私の話していることを理解してくれないときです。

難しい熟語や専門用語を
多用しているつもりはありません。

外国語由来のことばは
極力避けて伝えています。

時代錯誤な概念を
若者に押しつけているつもりもありません。

たとえば、
「この歌詞の意味を自分なりに解釈してみて」
が通じない。

「この夏は、どんなの聞いてたの?」
という質問に、とんちんかんな答えが返ってくる。

「先週した話を、おさらいを兼ねて、
覚えている範囲でいいので話して」
と聞けば、
全く理解してくれていなかったことがわかる・・・

こんなときは、戸惑うとともに、
ひどく反省します。

相手が理解できないことばをつかう自分に。
わかるスピードで話していない自分に。
そして、理解できていないことに気付かなかった自分にも。

そうそう。
インストラクターズにもいつも話しているんだった。
「5才のこどもに、わかるように説明しなさい」。

だからそうした、
わかってくれない子たちには、
スピードをぐっと落として、
難しい熟語には、ぜんぶ解説までつけて、
わかりやすく、かみ砕いて教えるように心がけます。

まるで、
布をかけたパソコンを、
上から叩いているようです。
もどかしい。

小中学生相手ではありません。
音楽用語を一切知らないような、
一般の人に教えているのでもない。

音楽を志し、専門的に学びたいと考えている、
10代後半の若者たち。

どんなにいい声だって、
どんなに音楽のセンスがあったって、
どんなにがんばれる子だって、

これではプロはおろか、
劇的に上達するのは難しいなと、
頭を抱えてしまうのです。

 

上達のためにもっとも必要な資質とはなにか?

音楽を志す人なら、
技術力を身につけるための「忍耐力」、
生まれ持った「音楽的センス」、
そして、
声や姿勢、腕や指の長さなどの「身体能力」を上げるでしょう。

私はそこに迷いなく、「国語力」を加えます。

音楽は非言語表現であると考える人もいます。
だから、ことばの学習はいらないと言うのです。

幼い頃から、
ことばとは無関係の部分で音楽を理解し、
表現を自然に学んでいく天才も、
もちろん、世の中には存在します。

しかし、それ以外の大多数は、
師と呼ぶ人に教えを仰ぎ、
師の言葉に耳を傾けながら、
上達していきます。

 

独学で自分自身に教える場合も同じです。

耳から入った情報を感じ、理解し、
自らの表現に昇華できるまでかみ砕く。
その過程に、少なからず、
ことばが関与しているはずなのです。

当たり前のことを、
当たり前に理解し、語る能力。

国語力は、すなわち、思考の力です。

音楽の世界だけではありません。
どんな社会で、
どんな仕事をして生きて行くにも、
「国語力」がなかったら、ダメなんです。

「そういうのって、
こどもの頃につける力だから、
今さら遅いですよね・・・」

などと、悲観的になる必要はありません。

国語力を鍛えることは、
おとなになってからも可能です。

漢字ドリルをやるとか、
国語の教科書を勉強し直すとか、
そんな難しいことは必要ありません。

読むことと、書くことを、
コンスタントに、ただ続けるだけです。

そう言うと、
「自分、本を読むのは苦手なんです。
頭にちっとも入ってこなくて。」
などという若者もいます。

それは、難しい本を読もうとするから。
自分が理解できる、
興味の持てる本を読めばいいのです。

最初は、絵本でも、
童話でもかまいません。
こども向け小説だっていい。

あ、ゲームの攻略本のような
情報系はカウントしません。
絵だけで情報が拾える漫画もNGです。

とにかく、毎日1ページでも、
1行でもいいから、
真剣に読む。

そして、書くのです。

ブログが無理なら、
ツイッターでも大丈夫。
なんならインスタに1行でもいい。

「これ食べた」「ここ行った」
のような、単なる情報ではなく、
今、感じていること、
考えていることを文字にする。

この2つを毎日続けたら、
1年後には、びっくりするくらい、
ことばの力がついていることに気付くはずです。

とにかく国語力、お願いします!

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