「フィルター」をぶっ壊せ
ティーンエイジャーの頃、
とにかくテレビに出ている「タレント」や「アイドル」
そして、いわゆる「歌手」というのが、
まぁ、ことごとく嫌いでした。
ほんっとにひねくれていたんですねー。
テレビというのは大衆に向けて
サブリミナル的にプロパガンダを吐き出すブラックボックス、
くらいに思っていて、
人はみな、テレビの価値感に洗脳され、毒されている、
と信じ込んでいたので、まぁテレビは大嫌いでしたし、
テレビに登場してもてはやされる音楽も、ドラマも、
もちろんバラエティも、
いやはや、ぜーーんぶ嫌いでした。
だから、業界でお仕事をすることイコール資本主義への敗北、
下世話で、低俗な文化に媚びへつらって、
生活の糧を得るための、いわば身売り、と見下していて、
そんな業界でお仕事をすることこそが、
「プロ」と認められることなのだと悟ったときは、
ロッカーとしてのプライドが相当傷ついたものです。
しかし。
実際業界でお仕事をはじめてみると、
外側で見て、想像していたのとは、
事情は全然違っていました。
音楽の現場の人たちには、
本物の「音楽愛」がありました。
「ロック魂」も、
「本物志向」もちゃんと存在していました。
業界で「一流」といわれる人たちは、
実力もセンスも、誰よりも優れ、
そしてなにより、熱い情熱を持っていました。
テレビの世界でも、
広告の世界でも、
映画の世界でも、
プロ中のプロといわれる人はみな素晴らしい。
大衆が喜ぶものをつくっているのじゃない。
彼らがつくるもので、多くの人が喜び、幸せになるんだ。
業界の人たちを深く知るほどに、
そんな感銘を受けたものです。
そして、ステージのど真ん中で、
そんなプロフェッショナルたちを動かす人たちは、
想像していたよりも、
ずっとずっと魅力的で、純粋で、一所懸命で、
たまらないオーラに溢れていました。
テレビというフィルターのこちら側では、
けして感じ取ることのできなかった人間像。
真摯に自分自身の仕事と向き合い、
スタッフの要求にこたえ、
ファンの期待にこたえ、
毎日を試行錯誤しながら、
最大限の努力をし続ける。
ひとりひとりが、リアルな人間たちでした。
誰かの、何かのフィルターがかかることで、
情報のリアリティや鮮度はどんどん失われてしまうもの。
音楽もまたしかりです。
どれほどの技術を持ってしても、
「録音技術」というフィルターがかかってしまえば、
演奏のリアルな魅力は薄まってしまいます。
それをCDやレコード盤に焼き付ける、
mp3という信号に変換する、
インターネットの電波に乗せる、
PCのスピーカーを通す。。。
この薄まり様はすごい。
それでも伝わる音楽をつくる。
フィルターがかかることを見越してつくる。
ところが、さらにフィルターがかかる。
Youtube, Spotify, Itunes…
これ以上はつくり手はコントロールできない領域に入っていきます。
勝手にジャンル分けされ、
勝手に「オススメ」に入れられ、
勝手にごちゃまぜに再生リストに入れられ、
生身の人間が生み出すリアルな音が、
別の生身の人間の耳に届くまで、
なんて遠い道のりなんだろうと、気が遠くなります。
受け手は、そのタイムラグというか、
リアルとの距離を、
想像力と思考で埋めていくしかない。
その距離を埋める想像力こそ、
そして、リアルを見極めようとする行動力こそ、
時代の恩恵を最大限に受けながらも、
たくさんの人たちの、
ありとあらゆるフィルターがかかりまくった情報を鵜呑みにして、
リアル不感症にならないために、
今こそ必要な力なのではないか。
そしてなにより、
わかったつもりの「自分の思い込み」というフィルターこそ、
なにより、ぶっ壊さなくちゃいけないものなのじゃないか。
しくみが複雑になるほどに、感性と思考力が試されるのは、
いつの時代も、どんな世界も同じです。
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