大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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練習環境を整えることこそ、練習の最重要課題!

   

先日、毎月ヴォイトレを担当している、
某事務所の若手声優たちのワークショップを
はじめてZOOMでやりました。

いつもスタジオで会っている彼らの、
いわば、自宅に潜入するような格好となり、
いい機会だからと練習環境について、
いろいろ質問してみると、
実に興味深いことがわかりました。

1年ほどレッスンをしているのですが、
彼らの歌の上達具合は、
まさに彼らの四人四様の練習環境と一致していたのです。

工業高校の出身で
自室にDIYで防音室をつくったというR君。
楽器は弾けないし、ソフトも不案内なので、
毎日カラオケを聴きながら、
「とにかく練習しまくっている」といいます。

非常に声量がある、いい声の持ち主で、
大きな声をコントロールできるテクニックもある。
楽器や機材の環境をつくっていけたら、
より細部にこだわってプロフェッショナルな実力をつけられるはずです。

ひとり暮らしで、
ちゃんと声を出して歌えないというAちゃんは、
時々スタジオなどを借りて練習をしているようですが、
メインはひそひそ練習。
声量はそこそこあるものの、
ちょっと音量を出すとうまくコントロールできなくなる。
そんな人は、きちんと楽器を鳴らして練習できる、
練習場所の確保が急務です。

楽器もできて、がっつりDTM機材もそろえているSちゃんは、
宅録をしていることもあり、
非常に緻密に的確に歌える実力派。
自分の魅力もよくわかっていて、表現力もあります。

ワークショップ開始当初、声量がないことが気になったのは、
ヘッドフォンをかぶって、マイクに向かって歌うという、
練習環境のせい。
マイクに頼る練習をしていると、
広い音域を一定の音量で歌う力がつかないからでした。

みんなが練習環境の話をしているときに、
「ゲーム買っちゃったんですよ−」と笑わせてくれた、のんきなY君。
ギターも弾けるし、声優らしい、いい声なのですが、
ゲーム環境と同じくらい、
歌の環境を整えてくれる日がきたらいいなー、と祈るばかりです(^^)

 

音楽家は、楽器を触るのが、歌うのが、
好きで好きでたまらないもの。
放っておくと何時間でも練習しちゃう。
そんな人しかプロにはなれないんだよ、
というお話しを、これまでずいぶんしてきました。

夢中で練習するのはみな同じとすれば、
大切なのは「質」。
いかに「練習の質」を上げるかが、
結果を出す鍵となるわけです。

そして、その「練習の質」は、
「練習環境」に大いに左右されます。

歌は生楽器。
小手先のテクニックではなく「鳴り」が命。
周囲に気を使って、ろくに音が出せない状態で、
どれだけ練習をしても、
「いい音」を出せるようには、残念ながらなりません。
アコギしかり。サックスしかり。ドラムしかり。

さらに歌の場合、
カラオケに乗っかって、大きな声で歌っているだけでは、
練習精度はイマイチがありません。
自分の歌の精度をジャッジする目安が必要です。
楽器や音響、DTM機材なども含めて「環境」。
しっかり整えて、細部にこだわって練習したいものです。

それぞれ、家庭の事情、制約はあるでしょう。
しかし、あの手この手で、環境を整えるくふうこそ、
精度の高い練習の第一歩。
がんばりましょうね!

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 - B面Blog, 「イマイチ」脱却!練習法&学習法

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