ヴォイストレーナーという仕事
自分にできないことは教えられない。
いろいろな考え方があるでしょうが、
私は、歌に関しては、これがすべてと考えています。
これは、ヴォーカリストとしてのお仕事を通して、
体験的に学んだことでもあります。
理解できない歌は歌えないのです。
テクニカルなことのすべてがクリアできても、
音楽的に、教科書通りに歌うことはできても、
そこにスピリットが通わない。
つまり歌になりません。
同じように、どんなに頭でわかっても、
腑に落ちないことばは伝えられない。伝わらない。
歌えない人に歌の批評をされても、
教えられる側は途方に暮れるばかりです。
しかし、歌の評価が高ければ、
いい指導者になれるというわけでもありません。
伝統芸能の世界では、
芸事は師匠を真似て、カラダで覚えるもの。
しかし、3〜4才からお稽古をしてきた人たちならともかく、
17〜18才を過ぎてから、
そんな気の遠くなるようなことをはじめても、
時間がかかるばかりで、なかなか成果はあがりません。
おとなになってから芸事を身につけるには、
科学と論理、そしてエビデンスのある、
しっかりとしたメソッドが必要なのです。
指導者に求められるのは、
歌とカラダ、そして音楽に対する圧倒的な理解。
歌の実力とキャリア。
そして最後に、
もうこれが、本当に大切なんですが、
指導する人たちに対する愛情と、
コミュニケーション能力です。
自分のキャリアを
生徒に投影してはいけない。
生徒に尊敬されよう、
生徒をコントロールしようなどと、
考えてはいけない。
生徒に嫉妬したり、
ライバル心を持ったりしてはいけない。
もちろん、生徒に媚びてもいけない。
信頼関係を築くことの大切さ、
難しさはどんな社会でも同じですが、
だからこそ指導者は、
どんなときも学ぶことを怠ってはいけない。
あらゆる機会に、
自分自身の表現力、言語力を鍛え続けなくてはいけない。
そんなことを日々考えながら、
精進を続けるのです。
◆基礎力がないわけではないのに、歌の評価が上がらない。思うようにキャリアアップできない。そんな悩みを抱えるシンガーのためのスーパー・ワークショップ“MTLネクスト”、始動。
◆6日間で歌とヴォーカルの基礎のすべてを学ぶ『第9期MTL12』の日程決定!
4月11日(土)、4月25日(土)、5月9日(土)、5月23日(土)、6月6日(土)、6月20日(土)詳細は近日公開!
◆メルマガの無料登録はこちらから。
関連記事
-
-
まず、「やれます」と言ってみる。
「なんで英語で歌詞がかけるんですか?」と、 よく質問されます。 私はいわゆる帰国 …
-
-
ステレオタイプ!!
買い物先でショップの店員さんに話しかけられることが苦手です。 理由はいろいろある …
-
-
価値は受け手が決める 受け手は送り手が選ぶ
他に認めてもらうことで、はじめてその価値が生まれるというものがあります。 誰かの …
-
-
「プロになりたい」って一口に言ってもね・・・
少し前、若手売れっ子ドラマーがインタビューで、 「ドラムを始めたときから、歌バン …
-
-
鳴らない楽器と鳴らせないプレイヤー
輸入物の下着の値段を見て、 ひっくり返りそうになったことのある女子なら、 「洋服 …
-
-
「なんで電話番号わかったんですか?」
今日、来客中に電話が鳴り、 リビングにいたジェフ夫さんが対応してくれたようなので …
-
-
バブル期のカラオケ制作現場は、めっちゃすごかった!
「わかってんの? プロのミュージシャンとかいうのは、歌謡曲のカラオケつくったり、 …
-
-
げに不安定な音を奏でる、完全なる楽器?
歌に真剣に取り組むほどに、 人間のカラダという楽器の奏でる音の不安定さに、 気が …
-
-
「次、完璧に決めるんで」
レコーディングの現場などで、 自分の歌のプレイバックを聞いて、 「お。惜しいな」 …
-
-
恋するように、バンドする。
棚卸し週間にて、 これまでにやってきたバンドを ひとつひとつ思い出してみました。 …
- PREV
- マンツー vs. グループレッスン
- NEXT
- 「完全無欠」を更新する。
