大どんでん返し!?
2022/12/25
『宇宙戦争』というSFの父、H・G・ウェルズの名作小説があります。
ネタバレを承知で、手短にあらすじを言うと・・・
ある日地球に降り立った火星人が、突然、猛攻撃を仕掛けてくる。
毒ガスと熱線でロンドンの街を焼き払う。
絶望的な敗戦を繰り返す人間たち。
もはやこれまでとあきらめかけたそのとき、
火星人は突如、一斉に死に絶えてしまう。
・・・こんなストーリーを、
ここ数日、繰り返し思い出していました。
火星人は、なぜ突然、一斉に死に絶えたのか?
それは、地球に太古の昔から住む病原菌にやられたからでした。
免疫というものを持たなかった火星人は、
病原菌に対して完全に無防備だったのだ、というお話です。
いやいや。
私がこのお話を持ち出したのは、
なにも「免疫を持たない生物は病原菌に対して無力である」などという、
わかりきったことを説明するためではありません。
「大どんでん返しは予想もしない形で起こるのだ」という、
SFに夢中になっていたティーンエイジャーの頃から
抱き続けているファンタジーを、
今、心に新たに刻みたいのかもしれません。
大どんでん返し。
荒唐無稽なプロットでも、
ご都合主義な脚本でもいい。
今、心から必要なのは、
そんな「うっそぉ〜」な大どんでん返しであります。
こどもの頃、
巨大な雪男に追いかけられる夢を見ました。
たぶん、映画かなにかで見たのでしょう。
家くらいの大きさの巨大な怪獣は、
どしん、どしんと足音を響かせながら私を追いかけてきます。
あまりの怖さに、飛び込んだ見ず知らずの家。
なぜか囲炉裏があり、その縁には、
ぽつんと小さいお湯のみに入ったお茶が置かれていました。
その瞬間、幼い私の頭にひらめいたのは、
「あ、雪男だから、熱いお湯には弱いんだ」!
小さな湯飲みをつかむとおもむろに外に出た私は、
その大きな雪男に向かって、
お湯のみの中のお茶をばちゃっとぶちまけたのです。
その次の瞬間、
家ほどもある大きな雪男は、
氷が溶けるようにどろどろに溶けて崩れ落ち、
跡形もなくなってしまいました。
「えーーーっ!?」
やった私が一番驚きました。
「こんなんで、溶けちゃうの??」
あまりに大どんでん返しなストーリーで、
忘れられない「My名作夢」のひとつです。
さて。
世界は、今全力で戦っているにっくき敵に、
いつ、どのような形で、勝てるのでしょう?
ある朝起きたら、ウィルスが消滅していた、
なんて奇跡が起きるのか?
オレンジジュースをぶっかけたら、
ウィルスが自らの細胞をむしばむように変容するとか?
(こんなニュースが流れたら、世界中から一瞬でオレンジが消えるでしょうが・・・)
無名の天才科学者が、
一滴口の中に垂らすだけで完全なる免疫力を身につけられる薬を発表するというのは?
どれもアンリアルな夢物語でしょうか?
では、今のこの現実はどう?
半年前にこんな世界を思い描いて、
何かに書き記していたとしたら、
「今さらそんな疫病が流行るなんてストーリー、
あまりにクラッシックなSFみたいで流行らないよ」と、
誰かに言われはしなかったか?
SFチック、リアリティのなさで言えば、
今の世界の状況は、火星人や雪男と、
一体なにが違うって言うんでしょう?
誰にも想像もできなかった状況が起きるってことは、
同じくらい、大どんでん返しだって、
期待したっていいはず。
ただそれが、
どんな形で、どこから、どうやってやってくるのか?
誰にもわからないだけ。
今はただ、思いもかけない大どんでん返しを祈りながら、
粛々と引き籠もるのです。
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