大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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高い声が出ない原因は、まさかの「上咽頭」?

   

一昨年から、声が不調で思うように歌えない日々が続いていたことは、いろんなところで書いてきました。

酷い風邪を2回続けて引いて、声が出ない、咳が止まらないという時期を経て、
声を出そうとすると痰がごろっと出てきて、声がガラガラになる。
高い声が出ない、高い音のピッチがあたらない。
そんな症状が延々と続いていました。

複数の内科にかかり、抗生物質、ステロイド吸入、痰切り薬、抗炎症剤、漢方薬、
うがい、鼻うがい、トローチ、吸入、龍角散。
ウォーキングに、朝練。
断食もしたし、白湯もたっくさん飲みました。

そうやって、ありとあらゆることを試して、ちょっとずつちょっとずつ回復したものの…
どうしても、元の水準の声が戻らない。

家やリハーサルで軽く出しているときは大丈夫なのに、
本番になってガッと音圧が上がると、いきなりゴロッと痰が出て、のどを塞ぐ。
声がガラガラになる。パキンと鳴らない。
そもそもピッチが届かない。

そんなことを話してみると、あちこちから、同じような声が聞こえてきました。

悩んでいる人の多くがヴォーカリスト。
みんな、同じ症状です。

「コロナの後遺症だ」と言う説が圧倒的に多く、なるほどと納得したものの。

こんな状態がこの先も続くのか。
それとも、一生続くのか?
そんなことしているうちに、年取って、ますます声が出なくなっちゃうんじゃないのか。

いや。それだけは絶対に許せません。

 

そんなわけで、先月、また別の呼吸器系の内科の門を叩きました。

あれこれ検査した後、お医者さんがこう言うのです。
「一度、耳鼻科を受診してみてください」

えー?
鼻水は出ないし、鼻が詰まっている感覚もまったくないんだけどな…。

それで今度は、通える範囲で最も評判のいい耳鼻科へ。

CTを撮った後、鼻からカメラを入れながら、先生は言いました。

「副鼻腔は問題なかったんですが、軽い上咽頭炎がありますね。
(上咽頭から痰が降りてくる)”後鼻漏”かもしれません」

上咽頭というのは、鼻の奥と口の奥の間。のどちんこさんの斜め上。
風邪の時に炎症を起こす場所です。

どうやら上咽頭でも痰がつくられて、
それがノドに降りてきてくるケースがあるらしい。

そこで勧められたのが、Bスポット治療です。

「とにかく痛い」と聞いていた、恐怖の治療。
もちろん、やらないという選択肢はありません。

コロナ検査のときのように、鼻から綿棒を突っ込んで、塩化亜鉛液なるものをつけて、

ゴリゴリゴリ。
左右それぞれ10回ずつ。

次にどちんこさんの奥に綿棒を突っ込んで、ゴリゴリゴリっと3回。

痛い痛いとは聞いていたものの、想像を絶する激痛に、思わず先生の手を掴みそうになりました。

終わったあとも、まるで風邪を引いたときみたいにヒリヒリ痛くて、家に帰ったら寝込んだほど。

翌日のライブリハまで違和感がハンパなくて、正直、ちょっと後悔したくらいです。

この治療を週に1回。10回〜15回続けると言います。

痛みがなくなって、綿棒に血がつかなくなったら終了。
痛みがなくなる日がくるなんて、信じがたい…

ところがです。

2回目に行ったら、ちょっとだけ痛みが楽なんです。
そして、3回目は、さらに楽。

しかも、2回目の治療の直後くらいから、高い声が、ポンと当たるようになったんです。
ガラガラしたり、詰まったりすることも、急に少なくなってきました。

そうか。

高音を歌うとき、私たちは鼻腔の共鳴を頼りに、呼気圧や声帯さまの張り具合のバランスを取っています。
上咽頭に痰が張り付いていると、その共鳴がうまく起きない。
するとカラダは、「高い音が出ない」とパニックを起こす。

だから息む。
声帯さまにぎゅっと力を入れる。
なおさらピッチが届かなくなる。

…なるほど。
一部と全部。

不調は、学びと気づきの宝庫です。

まだまだ治療ははじまったばかり。
あと10回。

絶対治ると信じて、がんばります!

鼻の奥、のどちんこの上にある「上咽頭」。ここに炎症が起きると、痰がノドに降りてくることがあるらしい。

 - カラダとノドのお話, 声のはなし

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