大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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コンプレックスは、がんばれない言い訳。

      2024/06/26

人間のコンプレックスってのは、いやもう、他の人が見たら、本当にどうでもいいことで。
いろんなことをコンプレックスのせいにして、あきらめては、もっとこうだったら、もっとあぁだったらと、悔しさを反芻するもんです。

ギターリストを志したその時から、手が小さいことがとんでもなくコンプレックスだった私。
あまりにコンプレックスすぎて、人に言うこともできず、日々、小さな手を見つめてはため息をついていました。

なにしろ、当時のアイドルはジミーペイジ。
腰まで下げたギターをカッコよく弾く姿に憧れて、ずいぶん練習したけれど、なにをどうやってもコードが押さえられない。
チョーキングなんかさっぱりできない。

私がチビだからだ。
なんでジミーみたいに大きく生まれなかったんだろう…。
ウジウジ思い悩みながら、がんばっても、がんばっても、さっぱりギターリストとして認めてもらえず、気づけば歌でばっかりあちこちバンドに誘われるようになって。
だんだんと、ギターの夢をあきらめていきました。

そんな話をギターリストの友人たちにすると、手が小さくてもギターの名人はいっぱいいるとか、そんなの練習次第だよなんて、言われるわけですが。
ちがうちがう。そこじゃない。

あの、指板の上を滑るような指の感じ。
ネックを握った時、コードを押さえた時の、なんともいえない余裕感。
手の大きさの違いが、プレイや音に出ないはずがない。
なんてたって、格好がいい。

私はきっと、「ギターリスト」になりたかったんじゃなくて、「手の大きなギターリスト」になりたかったんだ。
それってルッキズムじゃ?って言われるかもしれないけど、なんといわれても仕方ない。
それがロックってもんです。

そんなわけで、長年、ギターリストになれなかったのは身体的な条件のせいだと決めつけ、
カッコよくギターを弾く、手の大きな竿もの女子たちを見かけるたびに、内心、イラッとしてきたわけですが。

結局ね。

なにかがうまくいかないのって、コンプレックスのせいでもなんでもない。
単に、うまくいくまでがんばらないから。
コンプレックスは、がんばれない言い訳にめちゃくちゃ便利ってだけなんですな。

最近は、「手が小さいのに、それでもがんばってる!」的なアピールに利用したり、「手が小さいんだから、こんな難しいコードは弾けなーい」と練習をサボる時にも重宝しています。

コンプレックスって、うまくつきあえると、悪くない。

あなたのコンプレックスはなんですか?


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