大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

げに不安定な音を奏でる、完全なる楽器?

   

歌に真剣に取り組むほどに、
人間のカラダという楽器の奏でる音の不安定さに、
気が滅入りそうになることが多々あります。

きちんと調律されたピアノなら、
鍵盤をポンと叩けば必ず期待通りの音が出ます。
よれない、ぶれない、がさつかない。
変なビブラートもかからない。
叩けば必ず、叩いた強さで音が出る。

狙った音を確実に出すことも、
同じ音を繰り返し出すことも、
音量や音色を安定させることも容易ではない、
人間のカラダと比べると、
ピアノって、なんて頼りになる楽器なんだろうと、
思ってしまうこと、しばしばです。

しかし、安定した音が出せないということと、
表現メディアとして、
楽器として不完全であるということは別ものです。

カラダほど「今の自分」を的確に、完璧に、
表現してくれるメディアはありません。

不安定なのは、楽器そのものではなくて、それを演奏する人の心なんですね。

歌と向き合うことは、自分自身と向き合うこと。

安定感のある、力強い声を出したかったら、
自信を育み、確信を持って歌うしかないんです。

カラダにはこの瞬間、どんなことも可能です。

練習をするのって、
自分を信じる力をつけるためなんですよね。

◆(ほぼ)毎週月曜発行中!声に関するマニアックな情報やインサイドストーリーをお届けする無料メルマガ『声出していこうっ』。メルマガのお便りフォームから、ヴォーカリストの質問、疑問にお答えもしています。バックナンバーも読めますよ。

 - B面Blog, Singer's Tips, 声のはなし , , , ,

  関連記事

同じ音を、同じ音色、同じ音圧で、 100発100中で出す

人間のカラダは「まったく同じ音」を2回以上出すことはできない楽器。 そんなことを …

カラダをつくる~Singer’s Tips #23~

どんなに歌を練習しても、 肝心の楽器であるカラダがへなちょこでは、 いい音、いい …

no image
「声」は映画のBGMと似ている

他人の話を聞いているときに「声」に意識を奪われるなんて、 話し手の声がよほどユニ …

自分自身を幸せにすることなんて、 本当はめちゃくちゃシンプルなことなんだ。

ロンドンに長期滞在したい、という思いは、 もう何年も前からあります。 最低でも半 …

「いい音を出すには、ある程度の音量が必要だ!」とかって言いますけどね・・・。

「いい音を出すには、ある程度の音量が必要だ」 ロックギターリストが口をそろえて言 …

声の温度。歌の肌触り。音の匂い。

ボタンひとつで音色を自在に変えられる、 いわゆるデジタル・シンセサイザーが登場し …

「営業」なんて、無理!

「あいつは営業がうまいからね」 若かりし頃、 実力もセンスもイマイチのはずなのに …

死ぬほどしんどくなるくらい、やりたいこと。

音楽の道って、なんて苦しいんだろうって、 思っている人、たくさんいますよね? 歌 …

生(リアル)な音、ください。

溝が浅くなるまで、繰り返し聞いたレコード。 ぼろっぼろになるまで、使い込んだ歌詞 …

キー設定にこだわり抜く

「キー、D♭でお願いします」 そんなことを言って、いい顔をしてくれるのは打楽器と …