大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

それはプラシーボじゃないのか?

   

いい楽器は、いい音がする。
名のある歌手は、やっぱりうまい。
高価なフルーツは、めちゃくちゃ美味しい。

本物がいいのは、当たり前。

・・・しかしね。
それは、プラシーボじゃないのか?
時には、自分の固定概念を疑ってみる必要が、あるんじゃないのか?

先日、ジェフ夫さんに頭痛薬を買ってきてとお願いしたら、
そっくりさんな、パチモン
もとえ、新製品を買ってきてくれました。

なんでも、成分はまったくおんなじだそうで。
確かに、チェックしたら、有効成分はまったくおんなじ。

ところがね。
なんか、効かないんですよ。
どうも、イマイチ、しゃきっと頭が軽くならない。

たまたま、そういうタイプの頭痛だったのかと思ったのだけど、
その次に頭痛がやってきたときも、
やっぱりなーんか、すきっとしない。

これは、完全にプラシーボよね。。。
効くと思えば効くんだから。
そう。効く。効く。効く。。。

でもね。
私は、その薬が、パチモン、新製品なことを知ってしまっているわけで。

だから、なんか、毎回その薬を飲むたびに、
あー、これ、そっくりさんだから・・・と、
どこかで思っているのかもなと。

以下、ジェフ夫さんとの会話。

「ねぇ、ギターだって、プラシーボあると思わない?」

「そりゃあるさ。なんにだってあるさ。」

「やっぱフェンダー、いい音するよなー、とかさ。
ギブソンじゃなきゃ、ダメだよねー、とかさ。」

「そうね。プラグインのユーザーインターフェースが、
ビンテージ機材そっくりにつくられてると、
おんなじ音が出ている気になるよねー。」

ここだけの話、
化粧品は高いほど、効果が高い気がするし、
お洋服はいいお値段のものほど、オーラを感じるし、
高級なレストランほどブリリアントなお味がする。

・・・気がする。

私たちは、少なからず、その「気がする」にお金を払い、
その「気がする」で元気になったり、綺麗になったり、幸せになったりする。

自分が送り手になるときもおなじ。

どんなに価値のあるものを提供していても、
見え方、見せ方がイマイチだったり、
身なりや言葉づかいが雑だったり、
自分自身を卑下したり、不必要に謙遜したりすれば、
「プラシーボの魔法」どころか、
「逆プラシーボ」さえ起こりかねません。

プラシーボに騙されない、
本物を見抜く、目や耳を養いつつ、
自分自身の価値を少しでも高く見せる努力も惜しまない。

それこそが、自分自身の仕事を最高の形で届ける努力でもあるわけです。

なんでも、学びであります。

“MTL ヴォイストレーナーズ・メソッド” 開講!
ヴォイストレーナーとして活躍されている方はもちろん、ヴォイストレーナーを目指す方、トレーナーという仕事に興味があるという方も。業界トップクラスのメソッドを。

◆一生に一度、集中的に学ぶだけで、”自分で自分に教えること”を可能にするMTL 12。毎週日曜日10時〜Youtubeにて公開中。
毎週月曜発行中!声に関するマニアックな情報やインサイドストーリーをお届けする無料メルマガ『声出していこうっ』。バックナンバーも読めます。

 - B面Blog, Life, MISUMIの日記&メッセージ, 音楽人キャリア・サバイバル

  関連記事

「たった5分」に情熱を傾けるのは不毛ですか?

高校時代のお話です。 文化祭前に来る日も来る日も練習に明け暮れる私に、 同級生の …

「結局、誰よりも渇望した人間が・・・」

「なんで歌の学校なんか行くの? 歌なんか、習うもんじゃないでしょ?」 大学4年の …

誰もが自由に発信できる世の中では、 「プロフェッショナルな送り手」は不要なのか?

インターネットのおかげで、 個人が自身のコンテンツを自由自在に 広められる時代が …

けなし上手 vs. 誉め上手

「MISUMIは音痴だからさぁ。」 「ほら、あんたって、お勉強はできるけど人間的 …

「営業」なんて、無理!

「あいつは営業がうまいからね」 若かりし頃、 実力もセンスもイマイチのはずなのに …

「軸の弱さ」をなんとかする。~Singer’s Tips #13~

高い声を出すとき、どうしても上を向いてしまう。 大きな声を出す時は、なぜかクビが …

今は昔、「スタジオ」というマジック。

私がスタジオのお仕事をはじめた80年代。 レコード会社や制作会社からお仕事を引き …

「火事場の馬鹿力」を操る!?

切羽詰まったとき、 追い込まれたとき、 人は、思いもよらなかった力を発揮し、 周 …

人生は「パッション」がつくるのだ。

ある時期、心から夢中になって、 一度でも自分のカラダの中を通り過ぎたものは、 自 …

1音にこだわる!~Singer’s Tips #6~

歌のトレーニングの基本中の基本であり、 上達のために最も重要なことのひとつは、 …