大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

選ばれるミュージシャンであるための3つの資質

   

長年、音楽業界で優れたミュージシャンたちと
たくさんのお仕事をさせてもらってきて、
しみじみと、
音楽の道で成功するには、
理解力と対応力、そして発想力の3点セットが、
必要不可欠なのだなと思います。

現場では、
プロデューサーやディレクター、
はたまたアレンジャーが、
自分たちの頭の中で鳴っている音、
見えている世界観を実際の音にするために、
あらゆるアプローチでミュージシャンたちに要求を伝えてきます。

「青い空、青い海で風を感じてるイメージで」とか、
「高速を160㎞くらいでぶっ飛ばしてる疾走感」などと、
抽象的な説明をされることもありますし、

「ここはスティングの”English man in NY”のイントロみたいな」とか、
「メタルっぽい音で、ゾンゾンってバッキング弾いて」など、
“もちろん知ってるよね?”という曲の例が出てくることも、

実際のサンプル音源を次々かけて、
「ま、こんな雰囲気で」などとオーダーされることもあります。

ここで、「青い空って・・・?」、
「ゾンゾンって・・・?」
「こんな雰囲気って・・??」
と頭を抱えてしまうようでは、仕事になりません。

売れてる人って、ホントにこういう時の理解力が高い。

例えば、「青い空や青い海」には音はないですよね?
でも、そういう場所でかかっている音楽や、
そういう場所を思い出す音楽というのがある。

それがカリブの海なのか、湘南の海なのか、
それとも日本海なのか、
「音聴きゃわかるよね?」というのが、
オーダーしてくる人たちの本音でもあります。

ミュージシャンを選ぶ時も、
コミュニケーションが容易な人、
自分と共通言語が多い人、というのが基準になるもの。

さらには、そのイメージをしっかりと音にできる実力があること。
プロデュースサイドのイメージを越える音にできる、
対応力があれば、バッチリです。

「いやー、素晴らしい!
イメージを完全に越えました!」と喜んでもらえれば、
次も必ず呼ばれます。

そして、最後は、
制作サイドがアイディアで迷ったり、困ったりしている時に、
さらっと、悩みを解決してあまりあるアイディアを提供できる、

先方が予想もしていなかった素晴らしいアイディアを提案して、
作品をぐっと盛り上げるなどの発想力。

この3つのバランスは人それぞれで、
どれかひとつでも、ぐっと秀でているものがあれば、
お仕事がくる確率はぐっとあがりますが、
欠けているものがあってはダメらしい。

ただ単に楽器の練習をするだけじゃなく、
いい音楽をたくさん聴くこと。
ミュージシャンの友だちをたくさんつくって、
コミュニケーション力を磨くこと。
たくさんの人生経験を積んで、イメージ力を高めること。

優れたミュージシャンになるためには、
全方位的な努力が必要なんですね。

◆9月4日、YouTubeにて公開中のMTLオンライン12を最大限に活用するためのMTL “Basics”オンラインセミナーを開講!個別のポイントアドバイスも!詳しくはこちら

 - B面Blog, The プロフェッショナル , , ,

  関連記事

「立ち上がり」が悪いから歌がシャキッとしないのだ

音の「立ち上がり」の大切さに気づいていないばかりに、 イマイチ、歌がシャキッとし …

「歌の練習」って、なにしたらいいんですか?

「練習って、なにしたらいいんですか? MISUMIさんは、なにしてるんですか?」 …

「ビートを立てる」って難しい。〜Singer’s Tips #11〜

「もっとビート立てて、リズムよく歌って。」 などというディレクションを受けること …

歌詞の理解を深める~Singer’s Tips #12~

どんなことばで語られようと、 心ない政治家の原稿丸読みの演説や、 稚拙な役者のセ …

いますぐできる!呼吸力アップのための、ホントの「深呼吸」

「一生の呼吸数は決まっている」 というインドの教えがあります。 「短く速い呼吸を …

歌を歌って音楽の世界で活躍したい人に必要な3つの資質

歌を歌って、音楽の世界で活躍したいという人にとって、 必要な資質はなんでしょう? …

「リハーサルって何回くらいやるんですか?」

ライブに来てくれる学生たちによく聞かれる質問のひとつに、 「リハーサルって何回く …

「切り替え」と「集中」で精度を上げる!

インプットとアウトプットを、 高い精度で両方一度にこなせるという人は 一体どのく …

若さのエネルギーなんて、誰だって持ってるし、誰だって失う。

あれは中学1年の頃。 美術の時間になると、 テストの成績の1位〜3位を、 常に争 …

「軸の弱さ」をなんとかする。~Singer’s Tips #13~

高い声を出すとき、どうしても上を向いてしまう。 大きな声を出す時は、なぜかクビが …