「YES感」は、探して見つかるものでも、 つくり出すものでも、追いかけるものでもなく・・・
「なんか、ぱっとしない。」
「どこが悪いってわけじゃないんだけど、なんだかなぁ・・・。」
そんな風に思ってしまう作品や演奏というのがあります。
一般の人であれば、
そう感じてしまうものには興味はわきません。
ふうん、と思って通り過ぎ、
二度と思い出すこともないかもしれません。
しかし、作品を送り出す側としては、そのまま放置するわけにはいかない。
何度でも絵の具を上塗りし、データを書き換え、新たなアイディアを描き加え、
時には、壺を割ったり、お蔵入りにしたり。。。
すこーんと突き抜ける感覚を得られる作品ができるまで、
徹底的に取り組むものです。
しかし、この「すこーん」は、時間や手間をかければ得られるというものではなく、
めっちゃなんとなく、偶然できたのに、「すこーん」になっちゃうときもあれば、
お金をかけ、時間をかけ、人手をかけ、
愛情をありったけ注ぎ込んだにもかかわらず、
びっくりするほどパッとしない作品しかできないときもあります。
自分で自分の作品や演奏が、
「すこーん」と突き抜けているかどうかを的確にジャッジできる人、
足りない要素を見いだせる人ほど、
優れた作品をつくれる可能性が高いわけですが、
なんの野心もなく、無心でつくられたビギナーの作品にも
「すこーん」とくるものは数多くあり、
その曖昧な感覚の謎は、深まるばかりです。
以前、30名くらいの学生たちに、
無名アーティストのCDをブラインドテストよろしく、次々に聞かせ、
自由に感想を言わせるという授業をしたことがあります。
その時の結果は、非常に興味深いものでした。
「あ、この曲、気になる」
「いい声ですね。もっと聞いていたい」
「これ、歌詞がすぅっと入って来ました」
そんな風に生徒たちの評価が高かった作品は、
どれも、メジャーデビューが決まったアーティストのもの。
また、同じアーティストの曲でも、
ディレクターたちからも評価が高かったり、
最終的にシングルカットされることになったりした曲は、
生徒たちからも高評価でした。
一方で、「なんかパッとしない」、「興味がわかない」という評価の対象も、
ほとんど一致していました。
つまり、「パッとしない」「すこーんと突き抜けない」という感覚は、
好き嫌いだけでは説明できないのです。
ではどうしたら、「ぱっとする」作品や演奏ができるのか。
それが「すこーん」と突き抜けたのかどうか、どうやって判断できるのか。
このとき、頼りにすべきなのが、「YES感」。
理屈じゃない。
知ってる。そうそう。これこれ。
きた〜〜っ!
そんな感覚こそが、「すこーん」や「ぱきーん」につながる、
神様のメッセージ。
理屈をつけて納得したり、
他の人のしていることや、世間一般と自分のしていることを引き比べたり、
そうやって頭で考えて結論を見つけようとしても、
結局ダメなのです。
もちろん、試行錯誤も努力も必要かも知れない。
頭を使うなと言っているのでもない。
ただ、最後の最後の「YES感」は、探して見つかるものでも、
つくり出すものでも、追いかけるものでもなく、
しゃきーんと訪れるもの。
そこまで自分や作品を追い込めるか。
待てるのか。
そこが分かれ目なのかもしれません。
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