ちゃんと鳴らす。ちゃんと歌う。そしたら自然にハモるのだ。
いつもはそれなりに元気よく、
いい声で歌っているのに、
誰かのコーラスをやるとなると、
いきなり、蚊の鳴くような声になる人がいます。
「もっとちゃんと声出して」というと、
「あ、でも、ヴォーカルの人より目立っちゃいけないと思って・・」
と言う。
そうかと思うと、
合唱の指導をする人に、
「もっとまわりの人にあわせて小さい声で歌ってください」
なんて、言われたという人もいました。
実にもったいないお話です。
コーラスの歌唱で大切なのは、
ピッチ
リズム
発音
ダイナミクス
この4つをぴたりと合わせられれば、
声量や声質が違っても、ハーモニーとしては成立します。
例えばピアノだって、ギターだって、
すべての弦を完璧に均等に鳴らしながら弾けるわけではありません。
1本くらい鳴りの悪い弦があったって、
コードとしては成立しますし、
それなりにいい響きだってするでしょう。
全く音色の違う楽器、
例えば、エレキギターと生ピアノ、
バイオリンとフルートだって、
ピッチとタイミングをきちんとあわせて演奏すれば、
ちゃんとハーモニーを奏でます。
だから声質や音量を「合わせる」ということに、
神経質になりすぎる必要はないのです。
「合わせる」ことより大切なのは、
それぞれの声が、楽器としてきちんと鳴っていること。
人とハモる、合唱する前に、
ひとりひとりの声を「楽器」として成立させること、
心地よい響きに仕上げていくことは、
練習する側にとっても、
指導者側にとっても、実に大切なことなのです。
例えば、私自身の声は、
非常にエッジ感が強く、
声質的に、他の人の声とは混じりやすい声とは言えません。
また、エンジニアさんが口をそろえて、
「業界一声のでかい女」と言うほど、
デフォルトの声量が大きいという特徴もあります。
しかし、ここで遠慮して声量を押さえる方向で声を出せば、
自分のカラダの、気持ちのいい音色は取り出せません。
「アンプの音量を下げて」と言われたギターリストやベーシストが、
「これ以上音量下げると、いい音しないよ」
と嫌な顔をするのとおなじです。
「鳴らす」を遠慮すれば、
楽器本来のいい音は出ないわけです。
また、他の人の声質によせて、エッジをなくした、
ふわっとした声を出すなら、
私が呼ばれる意味はありません。
だから、まぁ、マニアックな言い方をすれば、
より太い響きを出し、
自分の声のエッジ感を下の成分で支えるような声をつくってきました。
後は表現力の勝負です。
2人以上でマイクの前に立つと、
一人だけ、とんでもなく後ろに立たされたり、
時には後ろを向かされたりしたこともありましたが、
現場では面白がられこそすれ、
嫌な顔をされたことはありません。
要は、ハモればいい。
カッコよければいいのです。
人とハーモニーをつくるときに、
自分という存在を消す必要はないのです。
まずは、自分自身という楽器の最も心地いい音色を出す。
ピッチ、リズム、発音、ダイナミクスを合わせる。
音量はマイクとの距離で調節すればいいわけですし、
そもそも、そんなに声量のバランスが悪いのは、
自分のせいとは限りませんし。。。
チームワークというのは、
お互いに譲り合ったり、
相手に同調したりすることではありません。
お互いの持ち味を、魅力を、最大限に引き出す、
お互いの弱点を理解し、カバーし合う。
何よりも、自分自身という「1つの音」の
完成度を上げていく努力をすることこそが、
コーラスの精度を上げることに他なりません。
いつだって大切なことは「ちゃんと鳴らす」。
まずは、そこからです。
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