パフォーマーはいつだって、その美意識を試されているのだ
ヴォーカリストは、すっぽんぽんになって、
自分の内側外側をさらけ出すようなお仕事ですから、
自己評価が低い人は、あまり適性がある職業とは言えません。
とはいえ、作品の多くは、
過剰なほどの自意識、自己嫌悪、コンプレックスなどなどから、
生まれるとも言える。。。
ヴォーカリストであろう、
アーティストであろうとすることは、
こうした心の葛藤に打ち勝つため、
日々、自分自身と戦うということなのかも知れません。
オーディエンス側から見ると、
ヴォーカリストがしゃきーんとステージの上に立っている姿は、
もう身震いするほどカッコいいもの。
しかし、自分がパフォーマーとなると、
オーディエンスから一斉に注がれる視線を浴びながら、
なんにもしないでステージの真ん中に立っていることくらい、
恐ろしい事はありません。
その恐ろしさに耐えられず、
思わず、もじもじしてしまうようでは、
パフォーマンスはまだまだ。
照れくさいからと、
冗談を言ったり、おちゃらけたりしたら、
せっかく高揚しているオーディエンスの気持ちは、
違った方向に向いてしまいます。
中学時代、部活動で英語演劇で、舞台に立ったことがあります。
生まれて初めての立ち稽古の日、
コーチに、「あそこまで普通に歩いて」と指さされて、
「え?普通に歩くって?どうやるの?」
と、耳元まで血が上るのを感じたことを、
今でも鮮明に覚えています。
人の視線を意識すれば、
いつも自然であることも、けして自然にはできません。
「自然体」と言われている人も、
「自然に動いている」のではなく、
「自然に見えるように動いている」。
そこに、計算と修練の積み重ねがあるのです。
パフォーマーは、いつも、
その勇気と度胸と美意識を試されている。
少なくとも、私は、そう信じています。
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