大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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優良オーディエンスが、「よいステージ」をつくる

      2017/04/09

コンサートに出かけて、
音楽に聴き入っていたつもりが、
あまりの心地よさに思わず寝てしまった・・・

多かれ少なかれ、誰にでもあることでしょう。

オーディエンスというのは、会場が広いと、
「どうせ自分は向こうからは見えない」と感じがち。

こちらは何千人の中のひとり。
だから、寝たって大丈夫・・・と思うわけです。

そう感じてしまう人の多くは、
アンコールの拍手なんかも人まかせ。

 

もちろん、アンコールは聞きたいのですが、

「どうせアンコールはやるんだから、
自分1人拍手しなくたって大丈夫」と思うのでしょう。

実際、そんな大人が多いコンサートは、
このままアンコールなしで終わるんじゃないかと思うくらい、
拍手が少ない時もあって、
同じオーディエンスのひとりとして、
恥ずかしくさえ思えます。

 

ところが、です。

 

実は、オーディエンスのようすは、ステージの上から、
意外なほどよく見えます。

もちろん、パフォーマーの視力や、会場の広さ、
ライトの状態にも左右されますが、

ライトをオーディエンスに向けているようなステージでは、
中央近くまで、オーディエンスのようすが見えるときも多々あります。

 

昔、とあるコンサートでは、
ステージ上のタレントさんが、
コンサート中にマイクでいきなり、
「だりひのゲー列目 ろーつーのぎーみ」(左の5列目、通路右側)
などと、お客さんにわからないよう可愛い子を指名しては、
スタッフに打ち上げに連れてこさせた、
という逸話もあるくらいです。

見えるのは可愛い子ばかりではありません。

これも、一昔前ですが、
コンサートの最中に、パフォーマンスの延長と見せかけて、
ステージ袖にすっと引っ込んだかと思うと、
「写真を撮っているヤツがいるぞ」と、
スタッフを叱っている人もいました。

さすがに2階席や、
あまりに後方の、ライトが届かない席は無理ですが、
寝ている人も、おしゃべりしている人も、
他の人と違う空気感が漂うからか、
意外によく見えるもの。
そして、パフォーマーは、
オーディエンスが思う以上にデリケートで、
お客さんの反応に心を左右されるものです。

 

 

もしかして、あの外タレたちも、

「日本人はさぁ、アンコールは絶対やるものだと思ってて、
拍手が薄いんだよね〜」と気分を害しているのではないか。

 

何万人にキャーキャー言われても、
ど真ん中で昼寝していた人のことの方が気になって、
眠れなくなっているのではないか・・・

 

やっぱりコンサートに行く時はコンディションを整えて、
元気に出かけたい。

コンサート中は、一所懸命、笑顔で見て、聞いて、
思いきりいいリアクションをしたい。

時には、声をあげて、盛り上げたい。

アンコールでは、誰よりも、大きい拍手で、
パフォーマーをたたえたい。

そして、すべてが終わったら、
心を込めてもう一度拍手をしたい。

 

せっかくコンサートに行くなら、
そんな優良オーディエンスを、目差したい。

そんな風に鑑賞、参加できるコンサートを選び取りたい。
 

そして、そして、ステージに立つ者としては、
そんなリアクションをもらえるような、
パフォーマンスを、追いかけていきたい。

 

コンサートは、ライブは、
送り手と受け手、両方でつくりあげるものなのですね。

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