聞く人を黙らせる、圧倒的な歌を歌う
2021/06/11
大学を卒業してフリーターをしながら、
あちこちのセッションで歌わせてもらっていた時のことです。
どうしたわけか、歌っている最中に、
頭の中が真っ白になってしまいました。
途中から何をどんな風に歌っていたのか、
まったく記憶にありません。
ステージを降りた後もぼーっと帰路につきました。
翌朝、起きたら、両膝に真っ青な青アザができていて、
しかも手の平まで、うっすら腫れていて、痛みます。
え?一体私、何やっちゃったの?と、
バンド仲間に電話してみると、
「え?まじ?覚えてないの?
いきなりばーんって座り込んで、
床叩きながら歌ってたよ。」
と言うのです。
いわゆるトランス状態というのでしょう。
さすがに、自分自身、ちょっと気味が悪くなりました。
しかし、そのライブが、
先輩ミュージシャンの間で評判になったのです。
「あいつ、なにやらかすか、わからない。」
「ものすごいエネルギー出るよな」と、噂されました。
そのライブがひとつのきっかけとなって、
いろいろな場所で歌う機会をもらうようになるのですが、
評判になった分、
厳しい評価も、同じくらいいっぱいもらうようになりました。
「キミ、面白そうだから、一緒にユニットやってみない?」
と誘っていただいた時のこと。
初回のレコーディングをはじめるなり、
「あー。ピッチ悪いね−。
ライブでは無敵な感じだけど、キミはレコーディングは無理だね」と、
いきなり宣告されました。
ショックでした。
しかし「無理」を受け入れてしまっては、
ゲームオーバーです。
そこから、ピッチを合わせる練習、
宅録で歌の精度を上げる練習を繰り返しました。
しばらくすると、練習が実を結び、
「うまいねー」「何でも歌えるね」
という評価をいただけるようになっていきます。
あぁ、これでやっと、プロの世界で認めてもらえる!と思い始めた頃、
今度は、
「うますぎて、面白くないな」などと、
言われるようになったのです。
「あんまりうまいと売れないんだよね。
テキトーに隙がなくっちゃ」。
本当に悩みました。
一体みんな、私に何を求めているのか。
一体私は、どうしたらいいのか。
そう。
みんな、「なんか」言いたいんです。
誰も責任取ってくれない。
誰も、私を、どうしたらいいかなんてわかんない。
だけど・・・と、気づきました。
たったひとつ確かなこと。
それは、
エネルギーはあるけど、テクニックがな、とか、
うまいんだけど、面白くないよなとか、
「なんか」言いたくなるような歌を歌っているうちは、
要は、まだまだなんだと言うこと。
人は「なんか」言いたい。
いちいち、その「なんか」を気にして、
くよくよ、うじうじする必要はない。
それより何より、
聞く人を黙らせる、圧倒的な歌を歌えるようになること。
それこそが、すべて。
修行は続きます。
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