歌と「向いてない」とクソまずいケーキ
「歌がうまくなりたいんですけど、なにをしたらいいですか?」
と質問されると、反射的に、
「今、どんなことをしていますか?」と聞き返します。
単に、その人がどんな風に歌に取り組んでいるのかわからないと、
アドバイスのしようがないからなんですが、
こう聞くと、必ずと言っていいほど、質問した相手はひるみます。
「あ、いや、特別なんにもしていないんですけど・・・」。
相手がアーティストや学生なら、
「それって、ホントにうまくなりたいのかな?」などと、
思わず突っ込んでしまう場面ですが、
まぁ、おとなの方が相手だとそうはいきません。
そこで、質問の方向を変えてみます。
「どんな歌が好きなんですか?」
そういうと、みなさん、顔を輝かせて、大好きなアーティストたちの名前を挙げるのですが、
「でも・・・」と、そのまま話を続けます。
「自分には高すぎる(低すぎる)し、自分が歌うには向いていないと思うんです」。
いやいや。取り組んだことがないことを、
向いているとか、向いていないとか、判断してしまうのは、
なんだかもったいなくないか。
歌いたい歌があるなら、歌えるようにくふうすればよろしい。
っていうか、歌えるまで歌ってみればよろしい。
人前で恥をかきたくないのは、誰でもおなじです。
練習しないで簡単に歌える、
「自分に向いている歌」というのを求めてしまう気持ちは、
もちろんわかります。
でも、歌いやすい、すぐに歌える歌を歌っていれば満足できるなら、
そもそも、冒頭の質問は出てこないのじゃないか?
どこかで「もっと」を願う自分がいるのじゃないのか?
これって、スポーツとか料理で考えると、実にわかりやすい。
例えば、私、学生時代のクリスマスに、
彼氏に食べてもらいたくて、
生まれて初めてケーキというものを焼きました。
いや、ケーキというものを焼いたつもりでした。
レシピと首っ引きで、粉だらけになって、そりゃもう、
必死でがんばったんですが、できあがったものといえば、
蜂の巣のごとく穴だらけで、その穴にはもれなく粉がつまっている、
ホールケーキの大きさのまずくて焦げ臭いクッキー。。。
大泣きしました(^^)。
あれが、私が生涯、最後につくったケーキです。
もう一生つくらないでしょう。
理由は、そのとんでもない失敗体験がトラウマになったから、
というだけではありません。
つくることが思いの他楽しくなかったのです。
そこからくふうして、うまくなりたいという欲求が湧かなかったんですね。
あーあ、向いてないわ。
それでおしまい。
だから、見事はケーキを焼いてプレゼントしてくれる人に出会ったりすると、
本当に感動します。
そして、自分の生涯たった一度つくった、蜂の巣クッキーの話をして、
「私、お菓子作りは、向いてないんですよね」と言えば、
その人は必ず、「最初は私もそうでしたよ。でもね・・・」と、
美味しいケーキを焼くコツを情熱的に語ってくれるのです。
好きだから、やりたいから、
失敗しても、何度もやってみる。
うまくできるまでやってみる。
うまくできる方法を探す。
うまくできるようになるから、
まわりから、才能があるねとか、向いてるね、と言われるようになる。
いや、もう、なんでも、ホントに同じです。
やりたいか、やりたくないか。
好きか、好きじゃないか。
最後は、やっぱりここに行き着くんですよね。
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