大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

情報か?経験か?

   

生まれて初めて弾いたギターは、
姉が持っていたクラシックギターでした。

中学入学と同時だったか、
姉がおもむろにクラシックギターを習いたいと言いだし、
我が家にやってきたガットギター(クラシックギタ−)。

姉はほんの数ヶ月習って、
そのままやめてしまったと記憶しています。

中学1年の時、いきなり音楽に目覚め、
ギターをはじめたくなった私が、
埃のかぶったケースから、
そのギターを救出しました。

当時の同級生が、
フォークソングかなんかを弾き語りしているのに憧れて、
最初はたまたま家にあったフォークソングの歌本で、
それからやっと手に入れたビートルズの歌本で、
ひとつ、またひとつとコードを練習しました。

最初に弾いたコードは、忘れもしないAm。
次がおそらく、GかEm。
それからC、D、Dm・・・。

じゃ〜んと弾いては、
指を一本一本指板の上に置き直し、
またじゃ〜んと弾いては、
次のコードを探し・・・。

なんとなくごまかし、ごまかし、
コードを弾けるようになった頃に、
例の「Fの壁」がやってきます。

この小さな手とガットギター。
Fは手も足も出ませんでした。

ギターをあんまりご存じない方のために
説明しておくと、

まず、そもそも、ガットギターは、
ネックの厚みがあって、指板も広い。
すなわちコードはとっても押さえにくい。

知らないってのは恐ろしいものです。
がんばれば弾けると思っているから、
ただ、練習するばっかりです。

もともと、
コードをじゃんじゃか弾いたりするギターではありません。

爪をキレイに手入れして、
爪弾くように弾くのが初心者の正調。

そんなこととは、つゆ知らず、
ギターはなんでも一緒やろ、とばかり、
楽器屋さんにいって、
いきなりピックを買ってきて、

じゃんじゃかじゃかじゃかとやるわけですから、
ナイロン弦は当然、ぶっちんと切れてしまいます。

さぁ、困った。

慌てて、近くの楽器屋さんへ行くものの、
弦はあまりにいろいろありすぎて、
どれを買ったらいいかわからない。

しかも、なにが困るって、
お店の人の「質問」の答えがわからない。

あたし「ギターの弦ください」
店員さん「なにギターですか?」
あたし「あ、エレキじゃないやつです」
店員さん「フォークギターですか?ガットギターですか?」
あたし「え?」
店員さん「何弦ですか?セットで買いますか?」

・・・なんとかかんとか、弦を手に入れて帰ってきても、
今度は、弦の張り方がわかりません。

姉を捕まえて、いちおう教わるものの、
ペグを回す方向を間違えて、
いきなり切っちゃって・・・

そんな、馬鹿な時間をいっぱい過ごした後に、

ビートルズみたいな曲を弾くには、
ガットギターじゃなくって、
フォークギター(アコースティックギター)と言われる、
ギターじゃなきゃダメだってこと、

弦は下から1弦、2弦と呼ぶのだということ。

弦にもピックにも、いろんな硬さや太さ、厚みがあって、
好みにあったものを選ぶのだということ。

弦の張り方や、ギターの調整の仕方などなどを、
ちょっとずつ学んでいきました。

教えてくれる人はいませんでした。

今の時代なら、
「ギター、弾きたい」と思ったら、
まずググるでしょう。

で、最初から正解に行き着く。

どんなギターを買えばいいか。
そのギターにはどんな弦を張って、
どんなピックを持って、
どうやって弾けばいいか。

情報があれば、
しなくていい回り道をしなくて済みます。
その分、さっさとダイレクトに、
本当の「練習」がはじめられるわけです。

うーん。羨ましい。

そんな風に思う反面、
この「無駄な時間」が、
実にたくさんの経験をくれたことにも気づきます。

ガットギターの音色とか、
その特長とか、

アコースティックギターの音色とか、
その響きとか、

楽器屋さんとのコミュニケーションとか、

楽器を学ぶということはどういうことかとか。。

すべてが誰かの受け売り=二次情報ではなく、
自分で体験的に学んだことです。

経験は情報では埋められません。

頭でわかることと、
腑に落ちるということは全然別のこと。

頭でっかちにならず、
とにかく、飛び込んで、
経験することの価値は年々上がっている気がします。

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