酒とタバコと断崖絶壁
2021/01/09
学生時代からバンドをやって、
学祭やライブなどで歌ったり、演奏したりしていた、
という人は、多いでしょう。
そんな大事なシーンは、
多少、時代が古めの人たちでも、
ビデオテープに収めてあったり、
最低でもカセットテープ音源くらいは残っているもの。
現代の若者なら、
まず間違いなく、
スマホなどで録音、録画します。
ビデオカメラを持ち込んで撮影する人もいますし、
特に最近はリモートライブも多くなっていることもあり、
ライブハウスにも十分な録画のシステムがあったりします。
とはいえ、自分の昔の映像や音源をチェックするのは、
なかなかに、エネルギーのいることです。
「いやー、若気の至りだ−」と、
穴があったら入りたくなるような、
恥ずかしい音源もあるでしょうし、
「あぁ、若かったなぁ。」
「あの頃は楽しかったなぁ。」などと、
遠い時代のバンドにまつわる思い出や、
恋の物語なんかに思いを馳せて、
しんみりしちゃうこともあるでしょう。
楽器の人なら、
自分の技術力にガッカリしたり、
反対に、意外にうまかった!と驚いたりするかもしれませんが、
ヴォーカリストは、
まず、間違いなく、
自分自身の声の違いに驚愕します。
私自身、高校の文化祭で、
あのカルメン・マキさんの『私は風』を、
エレキギターを弾きながら歌った、
恐ろしい音源が残っているのですが、
歌のテクニックの稚拙さもさることながら、
歌い出した瞬間の声の幼さに、
「あんた誰?」
と、思わず突っ込みを入れてしまいました。
まず、ディストーションというものが、まったくかかっていません。
つるっとした、ヤングな声です。
エッジもなくて、
丸くて、すんなりした、実に素直な声。
シャウト箇所なんか、ただの発声練習の「あー」です。
学生時代は、モノのわかったようなおとなたちに、
「やっぱさぁ、酒とタバコで、ノド潰すくらいしないと、
ロックは無理なんじゃないの?」
と、言われたもんです。
ついでに、「オトコもいっぱい経験しろよ」なんて、
余計なことも言われました。
「断崖絶壁で歌い込むくらいしろよ」
なんて言ってた人もいたなぁ。
いずれにしても、「ロックな声」は、
「ノドを一旦潰さないと出ない」という、
都市伝説を、みんなが信じていたわけです。
さて、時は死ぬほど流れ、
今では、自由にディストーションがかかるようになった私ですが、
結局、ただの一度も声を潰したことはありません。
一度も、です。
結節になりかけたことはありますが、
1〜2ヶ月ほどで治しましたし、
以降20年以上経ちますが(こわい)、
一度も声の不調で耳鼻科のお世話になったことはありません。
それもこれも、
「酒やタバコ」でノドをぶっ壊さなかったからであり、
「断崖絶壁」で歌ったりするような、
無茶なトレーニングを一度もしなかったから。
とんでもなく大きな声で、
シャウト混じりに何時間歌っても、
全く枯れないので、
「鉄のノド」的に言われていますが、
違うんですよ。ホントに違う。
だって、粘膜は鍛えられないでしょ?
例えば、目の粘膜を、ごしごし毎日こすっていたら、
目が強くなるとか、ないですよね?
どんな声を出しても枯れないノドをつくるには、
カラダとちゃんと付き合う。
これに尽きるんです。
無理が通れば道理は引っ込みます。
お酒もタバコも断崖絶壁も、
どう考えたって、ノドに悪い。
イメージに振り回されてはダメなんです。
ちゃんと、大事に使ってあげるから、
ちゃんと答えてくれる。
声は育ててあげるもの。
そして、ノドとの関係性を築くのに、
遅すぎるということはないんですよね。
今日も声帯様に感謝!
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