大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「自分らしさ」、一回置いておきません?

   

どんなヴォーカルスタイルが「自分らしい」んだろう?
「自分らしい声」って、どんな声だろう?
「自分らしく歌う」って、どうしたらいいんだろう?

ヴォーカリストのみならず、
プレイヤーなら、誰もが一度は、
アイデンティティ=「らしさ」というものと、向き合うでしょう。

「らしさ」ってなんだろう?

この命題ほど、深淵で、曖昧なものはありません。

「らしさ」を求めるのはなぜなのか?
「らしさ」を定義するのは、なんなのか?
「らしさ」を決めるのは、誰なのか?

いや、そもそも、
「らしさ」って、なんなのか?

 

「らしさ」への意識は、
多くが、他人からの、何気ない一言によって目覚めます。

「お前、個性ないね。」
「なんか、普通っぽいんだよね。」
「そういう、誰でもやるようなことやっててもダメでしょ?」

「で?キミの”売り”はナニ?」

自分というものを意識する力=自意識は、
人間と、その他、ごく限られた霊長類にしかないと言われています。

言い換えれば、ほとんどの動物には、自意識はないのです。

それでも、個々の動物は、
それぞれのアイデンティティがあり、
一匹一匹がびっくりするほど個性的で、
「らしさ」全開で生きています。

たとえば、小さなこどもたち。
自意識の芽生える前のこどもたちにだって、
驚くほどの個性があります。

「らしさ」って、身につけるものでも、
作り出すものでもないのです。

ただ、そこにあるもの。
見出すものなんですね。

「らしさ」を発揮しようと躍起になれば、
そこに無理が生まれる。
本物の「らしさ」と違う、
それらしい、なにかとすり替わってしまう。

結局、本物の「らしさ」じゃないものを、
強調しようとするばっかりに、
不自然な、稚拙な、安っぽい、
パフォーマンスや作品を披露してしまう。

 

「らしさ」とは、
「何を選択するか」ということです。

なんでもできる。
でも、自分はこれをやる。

なんでも手に入る。
でも。自分はこれに手を伸ばす。

自由度と選択肢が増えるほど、
人の「らしさ」って際立つものなのではないか。

心のままに。
ドキドキ、ワクワクに身をまかせて。
その瞬間瞬間に、
これだ!と思うものを選び続けられる自由と勇気。

「らしさ」ってそれに尽きると思うのです。

「らしさ」ってワードは一回置いておいて、
そんな自由と勇気を手に入れるために、
まずは今やるべきことに、
集中と努力をすべきだということです。

新年第1弾は、専門分野中の専門分野、洋楽ROCKセミナー。

ロックなみなさんも、そうでもないみなさんも、お申込お待ちしています!

 - B面Blog, 「イマイチ」脱却!練習法&学習法, クリエイト, 歌を極める

  関連記事

「なんでも歌える」と言わない勇気

「どんなの歌ってるんですか?」 どんなちっちゃなご縁も仕事に繋げようと躍起になっ …

選ばれるミュージシャンであるための3つの資質

長年、音楽業界で優れたミュージシャンたちと たくさんのお仕事をさせてもらってきて …

つながらない!

振り返れば、一昔前まで、 人と「つながる」にはそれなりの努力がいりました。 親子 …

とにかく歌う。毎日歌う。それを続ける。

生まれて初めて包丁を持つときは誰だって、 なんのことはない作業、 例えば、単に「 …

なんで、「できる」って言っちゃうんですか?

まだ小学生の頃だったか、 おとなたちが屋外で音楽をかけながら、 パーティーをして …

テンポが速い曲の練習方法~Singer’s Tips #26~

「ゆっくり目の曲はうまく歌えないんです。 テンポの速い曲の方が得意です。」 時々 …

ことばに「自分の匂い」をしみつける

ことばには、話す人の匂いがあります。 同じことを言うのにも、ことばの選び方や言い …

いますぐできる!呼吸力アップのための、ホントの「深呼吸」

「一生の呼吸数は決まっている」 というインドの教えがあります。 「短く速い呼吸を …

コツコツ積み重ねる微差が、逆転勝ちを演出する

自分の生まれは選べません。 生まれたときから、才能やルックスや音楽環境に恵まれて …

同じ音を、同じ音色、同じ音圧で、 100発100中で出す

人間のカラダは「まったく同じ音」を2回以上出すことはできない楽器。 そんなことを …