大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

人は「声の高低」でワクワク、感動する。

   

全っ然、キャラじゃないんで、
あんまり言わないんですが、
こう見えても、
ディズニーランドが大好きで、
開園当初から、折に触れ出かけてきました。

生まれて初めて行った時は、
おとぎの世界に紛れ込んだような、
園の完璧なつくりや、
そこかしこで流れる美しい音楽、
アイディアに満ちあふれたアトラクションの数々に、
心から夢中になったものです。

今ではすっかりおなじみの定番アトラクション、
『ジャングルクルーズ』も、
初めて乗った時は、
それはそれは楽しくて、
すぐにまた乗りたくなりました。

船長役のキャストたちの熱演もすばらしく、
絶妙な「間」と語り口で、
驚きと冒険の旅をみごとに演出してくれました。

すっかりディズニーランドに夢中になってしまった私。
その数ヶ月後、彼氏におねだりして、
再び、浦安へ。

大好きな『ジャングルクルーズ』の列に、
真っ先に並びました。

 

ところが、です。

楽しくないんです。

いや、もちろん、
ここで滝の裏に入りますよ、とか、
ここで首狩り族が出てきますよ、とか、
知ってしまったから、感動が薄れた、
というのは、ゼロではありません。

しかし、
『水戸黄門』を見て、
毎回、印籠が出てくるたびに、
「出た〜っ」と感動するように、

人は、定番のネタに、
気持ちよく、感動できるもの。

じゃ、なにが違うって?

キャストがイケてなかったんです。

もちろん、まったく同じセリフを、
同じタイミングでしゃべっています。
テンポもほぼ同じですし、
ことばが聞き取れないわけではありません。
やる気がないというわけでもないでしょう。

それでも、楽しくない。
盛り上がらない。

あまりにもがっかりしたからでしょう。
何十年も経って、
ビジネス向けの声のセミナーを開催するとき、
ふと、そのときのことを思い出しました。

 

あれって、なぜだったんだろう・・・。

 

考え始めたら止まりません。

スキッパー船長のセリフをググって、
自分でも同じように演じてみました。

「ジャングルクルーズへようこそ!
私が船長のMISUMIです。
これからみなさんを危険がいっぱいのジャングルへと御案内いたします。
何が起こるか分からないジャングル。
二度と戻ってこれないかもれません。
見送りの人たちにお別れの手をふりましょう。
バイバ~イ!」

やり出すと、楽しくなって、
すっかり気分はスキッパーです。
ヴォーカリストですから、
それなりの雰囲気が出ます。

どうやったら、
こんなセリフを盛り上がらないように言えるのか。

実験の結果あることがわかりました。

人がワクワク、感動するのは、
「声の高低」だということです。

歌うように、
高い音から低い音まで、
スリリングに上下しながら語られることばに、
人はワクワクしたり、感動したりするのです。

声の大きさを変えるだけでは、
効果は半分以下なのです。

優れた俳優は、自然にやっていること、
それが「歌うように話す」なんですね。

しかし、うまくセリフを言えない人で
これに気づく人はまれです。

セミナーでも、実際に、
みなさんにこのセリフを読んでもらいましたが、
「声の高さを変える」と説明しても、
どうしていいかわからない人がほとんどでした。

こんなとき、やってみて欲しいのが、
完コピです。

誰かのトークを、そのままの抑揚で、
声の高低を真似て話してみる。
それを録音してみることです。

最初は、難しいと感じるかもしれませんが、
似せよう、寄せようとしているうちに、
コツがつかめてくるはずです。

語学上達の決め手も、声の高低。
耳を鍛えるためにも、
ぜひチャレンジしてみてくださいね。

それでは今日はこんなところで!
バイバ〜イ!

◆【ヴォイトレマガジン『声出していこうっ!me.』】
ほぼ週1回、ブログ記事のインサイドストーリーなど、1歩進んだディープな話題をお届けしているメルマガです。無料登録はこちらから。バックナンバーも読めます。

 - B面Blog, ビジネスヴォイス, 声のはなし

  関連記事

「結局、誰よりも渇望した人間が・・・」

「なんで歌の学校なんか行くの? 歌なんか、習うもんじゃないでしょ?」 大学4年の …

「自分の声の地図」を描く

「あなたの音域はどこから、どこまで?」 「え?」 「高い方はどこまで出るの?下は …

「誉めて!かまって!」症候群

誰かにかまわれたい、 誉められたい、 認められたいという欲求は、 人間である以上 …

誰に話しても「ウソぉ〜」と言われるOnline映像制作秘話②

まだセミアマぐらいだった頃、 映像系音楽プロデューサーの アシスタントをしていま …

学ぶ姿勢

誰かから何かを学ぶときは、 ひととき自我のスイッチを切り、 その人の言うことを、 …

「慣れる」と「油断しない」の塩梅がムツカシイ。

今日、久しぶりにひとりで買い物に出かけました。 買い物に出たのは文具なのですが、 …

誰もが、自由に歌えるカラダを持っている。

もしも、何も考えず、なんの苦痛もなく、 どんな曲でも、素晴らしい声で自由に歌えた …

特別なことはなにも起きない

音楽業界でお仕事をするようになって、 少しずつキャリアを積み始めた頃、 街でばっ …

若さのエネルギーなんて、誰だって持ってるし、誰だって失う。

あれは中学1年の頃。 美術の時間になると、 テストの成績の1位〜3位を、 常に争 …

臨界点を突破する

「どんなに練習しても、高い声が出ない」 「毎日ボイトレしているのに、声量が上がっ …