「情報」を正しく伝えるだけじゃ、 人は感動しないんだ。
2022/12/25
「声って重要じゃないですか!
プレゼンでも、講演でも、やっぱ、声だもんなぁ。」
出版のメンターである土井英司さんに、
セミナーでいきなりそんな風に言われた時は、
「え〜〜!?ほんとぉ〜?」と思わず心の中で、叫んだものです。
(いや、もしかしたらホントに声出てたかもしれません。)
音楽一辺倒で生きてきた私が、
本格的なヴォイトレの本を世に残そうと志を立て、
いどんだ出版セミナーでのことでした。
その、ほんの1〜2年前、
生まれてはじめて参加した起業セミナーの講義がひと言も理解できなくて、
帰ってくるなり、玄関口で泣き崩れた、カタギの世界ワカバマークの私。
正直、会議とプレゼン、セミナーと講演の違いも、
ぼんやりとしかわかっていませんでした。
しかし、土井先生にそんな風に言っていただいて、
そういえば…と胸に手をあてました。
著者たちのパーティーでも、異業種交流会でも、
私がヴォイストレーナーだと告げると、みな異口同音に、
「声が小さくって悩んでるんですよね」とか、
「自分の声が嫌いなんです」と声の話をしてきます。
「社交辞令でしょ」くらいに思っていましたが、
どうやら、そうではなさそうです。
確かに、声をツールに仕事をしているのは、
ヴォーカリストばかりではありません。
講師だって、営業マンだって、
リーダーとしてチームを引っ張って行く人だって、
接客業や、受付のような業務をしている人だって。
声をつかう仕事って無数にあります。
以来、プレゼン大会やセミナー、
ワークショップなどに参加するたびに、
話し手の「声」にフォーカスしながら、
話を聞くようになりました。
すると、確かに、
「すっごいなぁ、この人の話、面白いなぁ。」
と心を揺さぶられる話し手は、例外なく、
表現力豊かな、よく響く声、
キャラの立った、個性あふれる声、
ガツッとエネルギーのある強力な声…
そんな、声の魅力の持ち主でした。
ヴォーカリストたちの歌を聴くように、
話し手たちの話を聞いていると、
その人の中で何が起きていて、
どこをどう改善すれば、もっと、その人らしい声で、
自信あふれるパフォーマンスができるようになるのかが、
手に取るようにわかったのです。
そうか。
声のエネルギーをどう扱うかという意味において、
「話す」も「歌う」も全くおんなじなんだ。
それまで、ビジネスマン対象のヴォイストレーニングなどというものは、
アナウンサーのような、
いわゆる「話し方」の専門家がやるものだと思っていました。
しかし、そうではない。
情報を正しく伝えるということは、
音符を間違えずに正しく歌う、ということと同じ。
必要最小限のことではあるけれど、
それだけで人の心を動かすことはできません。
話すように歌う。
歌の表現を極める方法論として、
最も大切に考えてきたことです。
逆もまた真。
歌うように話す。
それこそが、「自分」というエネルギーを100%声にして、
聴く人に届ける話し方なのだ。
確信が舞い降りました。
ならば、ヴォーカリストである、
私だからこそ伝えられること、
私でなければ伝えられないことがあるはず。
MTLのビジネスマン向けメソッドの原点となった想いです。
あれから10年あまり。
研究と試行錯誤を繰り返しながら、
セミナーや講演、ワークショップを通じて、
たくさんのノン・ミュージシャンのみなさんに
声の指導をしてきました。
それがそのまま、
歌のメソッドの充実にもつながりました。
「話す」と「歌う」。
人間が同じカラダをつかってやること。
感動は本能に根ざすことでもあります。
そもそも、切り離して考えるのがおかしい。
「歌う」が、もっと身近になる。
「話す」トレーニングが、もっともっと楽しくなる。
そんなことを目指して、
MTLのビジネスメソッドは、まだまだ進化を続けます。

MTLのビジネストレーニングのページはこちらです。
関連記事
-
-
声のリハビリ
3月からのライブ・ラッシュに向けて、 朝トレをしているわけですが、 ここ半年あま …
-
-
とっさの時の声、出せますか?
日頃、衝動的に出そうになる声を押さえつけることが習慣化していると、 とっさの時に …
-
-
頑固な、間違ったプログラムを解除して、「声」を解放する
カラダの構造や、発声のメカニズムを教えて、左脳からアプローチしても、 カラダに触 …
-
-
「大きい音」を扱うのって、テクニックがいることなんですぞ。
「ラウドな音楽をやっている」と言うと、 デリカシーのない、 雑な演奏をしていると …
-
-
準備せよ。そして、待て。
「準備せよ。そして、待て。」 仕事も人間関係もうまくいかなくて、ひどく落ち込んだ …
-
-
自分の声をディスるな!
「自分の声は、好きですか?」 講演会やセミナー会場で、そう質問して、挙手をお願い …
-
-
「私のカラダはギターには向いていないんだ・・・」
高校時代、ギターリストを目差していた頃のお話。 クラプトンに憧れて、黒いストラト …
-
-
「弾き語り」は自分の存在感をアピールできる、 最高にクールな飛び道具だ!
カナダはトロントの郊外の、とあるエージェント宅に居候していた時のことです。 週末 …
-
-
あがり症を克服する3つの方法
ビジネスボイトレを受講する人には、「あがり症」を訴える人が少なからずいます。 「 …
-
-
「あれが人生のピークだったって思いたくないんだ」
とある著名なヴォーカリストと共演させてもらった時のこと。 圧巻のパフォーマンスと …
