「自分の声になんか興味ない」?
2016/01/18
ずいぶん前、著者仲間と本の企画について話していたときのことです。
「いい声になれば、もっと自信がわいて、いろんなことがうまくいく」
というような本を書きたいんだ、と言う私に、
「え〜。私、別にいい声になんかなりたくないけど」
「オレ、自分の声になんか、全然興味ないけどね」
と、仲間に口々に言われて、
ひどくカルチャーショックを受けたのを覚えています。
そう言われてみれば、
私自身、自分の声にフェチほど興味があるのは、歌を歌っているから。
声が不安定で、ピッチもリズムもイケてなくて、
暇さえあれば自分の声を録音し、フォームを修正していたアマチュア時代から、
毎日のようにスタジオの特大スピーカーから、
「ボーカル、オンリーで聞かせて」と、
自分の声だけを大音量で流されるようになったプロ時代まで、
自分の声に過敏なほどに神経をとがらせてきたからに他なりません。
話す声には特別注意を払ってきませんでしたが、
それでも、人前で話したり、電話で誰かと話したりすると、
「いい声ですね」「気持ちいい声ですね」と誉めていただいて、
これも、日頃声を鍛えているから、やはりボイトレは有効なんだ、
と思ったわけです。
確かに、一般の人は、
自分が話す声を客観的に聞く機会は滅多にないでしょう。
聞く機会がない。
自分は全然気にならないし、興味もない。
だから、声を鍛えなくちゃ、などと思うこともない。
確かにそうかもしれません。
ところが、です。
人生には、突然、自分の声を意識する瞬間というのが訪れます。
1.声が枯れたとき。出なくなったとき。
2.誰かに自分の声についてネガティブなことを言われたとき。
3.老化などによって、突然自分の声の衰えを感じたとき。
そう、つまり、1年365日×生きて来た年の分だけ毎日毎日向き合っている「声」なのに、
意識してあげるのは、「不調のとき」だけなのです。
しかし、自分と出会う人たち、ふれ合う人たちは、
常に、自分の声を聞いています。
グラスゴー大学の実験結果に
「人の印象は500㎜セカンドできまる」というのがあります。
被験者たちは相手の顔を見ることもなく、“Hello”とひとこと聴いただけで、
300ミリセカンドから500ミリセカンド、つまり、0.3秒から0.5秒で、
相手に対する信頼感や、相手の支配力をジャッジしてしまったといいます。
さて、では、質問です。
「あなたが大好きな人を思い浮かべてください。
その人の声もなんとなく思い出してください。
次にあなたが大嫌いな人、その人の声を思い出してください。
さて、あなたの大好きな人と、大嫌いな人の声だけが入れ替わったとして、
あなたはまだその人を好きですか?
たいがいの人が、想像しただけで、顔をしかめます。
嫌いな人は、声も嫌い。
声が違うだけでずいぶん人の印象は変わるものなのです。
どうでしょう?
ちょっとは声に興味がわくでしょうか?
2016年はあんまり書いてこなかった、私のコアネタである、
「声」のことについても、少しずつ書いてゆくつもりです。
話し出すと止まらなくなるので、小出しに、ね。
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