大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「ときめかない」ものは、「ときめかない」。以上。

   

こどもの頃から、アイドル歌手というものに、
ホントに興味が持てませんでした。

友達やいとこが「きゃーヒデキ!」とか、
「ヒロミぃー」とかって騒いでいて、(年がばれる、年がばれる)
それがあんまり楽しそうなので、
一緒になって、騒いでみたり、

小学校1年生から毎日一緒に登下校していたノグチくんが、
当時女性アイドルにハマっていて、
マリちゃんの曲やら、
サオリちゃんの曲やらを、(こらこらこら、年がばれるぅ)
学校の行き帰りに一緒に歌ったりしたものの、

本気で心ときめいたり、
ワクワクしたりしたことは、ただの一度もありません。

小学校6年生でカーペンターズの歌を聴いて、
わぁ、この声好きっ!となり、

中学時代にWingsに電気的啓示を受けてからは、
もう笑えるくらい洋楽一辺倒。

 

日本のヒットチャートを賑わしたご本人たちと話していて、
あまりにとんちんかんな私の受け答えに、
「ねぇ、ほんっとにボクたちのこと知らないの?」と、
あきれられたこと数回。

かつて一緒にバンドをやっていたヤマダくんには、
「○○って曲も・・・?△△って曲も・・・?知らんのんかいっ!」
と、ひとしきりあきれられた後、
「それはある種、病気やな」的なことまで言われました。

 

日本の音楽業界で仕事をするのに、邦楽音痴は致命的だと言われ、
自分なりに聞こうとした時期はあります。

ごく一部の日本のミュージシャン、
山下達郎さんや、井上陽水さん、矢野顕子さん、
吉田美奈子さんの曲たちにハマって、聞いていた時期だってあります。

けどね。

ほとんどが「無理」なんです。

ドキドキしない。ワクワクしない。
つまりドーパミンも、アドレナリンも出ないんです。

なんと言われても仕方ない。
これはもう体質というヤツです。

 

おとなになって、さまざまな人とお仕事をさせていただくことになり、
左脳レベルで、あぁ、この曲は魅力があるな、とか、
この歌手はいい声だな、とか、
こういう歌が売れるんだよな、ということは、
きちんと理解出来るようになりました。

もちろん、仕事ですから、普通に邦楽曲も聴くようにもなりました。

でも、ときめかないものは仕方がない。

もしかして、だからこそ、冷静に指導できるのかも知れません。

 

ずっと昔、とあるレコード会社のディレクターさんに会わせてもらって、
いきなり「好きなアーティストは?」と聞かれ、

「ビートルズと、ツェッペリンと、ティナ・ターナーです」
と答えたら、

「いやいや、邦楽でですよ。尊敬する歌手とか、いないんですか?」
とあきれたように言われたので、

しばし答えに困って絶句した後、
「美空ひばりさんとか、都はるみさんはお上手だと思います。」
と答えたら、

「ほらね。そうやって、外しに来るんですよ。あなたのような人は」と
いきなり言われて、面食らったこともあります。

 

「ときめかない」ことを間違いだと言われても、困ります。

誰もが心ときめく人や、モノや、音楽が、
100歩譲って、あったとして、
そうしたものに、ときめけない人を攻めるより、

人と違った感性を持っていることを、
何故、ユニークだと、評価出来ないのか。

全くなぞです。

 

ちなみに、ポピュラー音楽以外で私がときめいたモノは、

シェークスピア、ハインライン、チャンドラー、漱石、朔太郎、
ホロヴィッツ、ラヴェル、ドビュッシー、
ウォーホール、ラウシェンバーグ、バーンジョーンズ、ダリ、
ヒッチコック、黒澤明・・・・

昭和のにおいは否めませんが、
世界的に見れば、すべて、笑えるくらい王道の、
「ときめきアイテム」なんですけどね。。。

 

ジブリやディズニーやハリーポッターが出てこないと、
「外しに来る」とか言われちゃうのかな。

ときめくものは、ときめく。
ときめかないものは、ときめかない。

好きなものは好き。
イマイチなものはイマイチ。

躊躇なく声に出せる世の中になったらいいなと、心から願っています。

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