大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

楽器はプレイヤーの「心」なんだっ!

   

昨今、SNSで楽器が盗難に遭ったというニュースが次々に流れてきます。

昨年末も、学生のギターが盗難に遭い、怒り心頭だったばかり。

一体全体どこのどいつが、
人の大切な楽器をお金と引き替えに売りさばいているのか。

楽器=お金と感じる根性。
本気でたたき直してやりたい。

 

高校時代、ギターが大好きで、
ハードケースに入れた重たいストラトを、
毎日毎日、持って登校していたことがあります。

そんなにいい楽器ではなかったけれど、私にとっては宝物。
そのギターを持っているだけで夢が叶いそうな気がしました。

ギターを弾いている時間だけが、
あこがれのミュージシャンたちと私をつなげてくれる、
特別な時間でした。

まぁ、それでも、あんまり上達しなくって。

 

なぜかヴォーカルでスカウトされた男子校のバンドで、
リードギターを弾いていたヤマワキくん。
それはそれはギターが上手で、格好いい男の子でした。

彼の仲間が言いました。

「ヤマワキはさぁ、楽器抱いて寝ているらしいよ」

 

なんか、「負けた」と思いました。
ギターへの思いで、なんか負けちゃった。

いや、別にギター抱いて寝なくちゃダメってことじゃありません。

ただ、私は「思いの強さ」しかなかったのに、
そこで負けたら、
やっぱりギターの腕だって勝負にならないよな、って、
何故か妙に納得したわけです。

 

楽器はプレイヤーの心です。

 

ヴォーカリストを志すようになって、
ヴォーカリストとしてプロになって、
毎日毎日、明けても暮れても、
声のことばかり考えて来ました。

朝起きるとベッドの上で、
声の調子をチェックすることからはじまり、
食事、エクササイズ、練習、
休日の過ごし方まで、
声のことを考えない時間はありませんでした。

 

プレイヤーにとっての楽器は、声と同じです。

 

友達や家族という存在よりも、
もっと近くて、愛おしくて、
何物にも代えがたいものと感じている人も、
たくさん、たくさんいるでしょう。

 

その楽器でなければ出せない音が、確実にあります。

プレイヤーにしか、その感覚はわかりません。

その楽器と一緒に過ごしてきた特別な時間や、
育んできた大切な仲間、
そして残してきた音の記憶。

 

そんなすべてを、自分の都合で奪って、
お金に換えてしまうなんて、
音楽家として、もう、絶対の絶対の絶対に許せません。

 

楽器を奪われたすべての人の手元に、
どうか、楽器が戻りますように。

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 - 夢を叶える, 音楽

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