「売れてるもの」が嫌いな人は「売れない人」?
あまのじゃくなのか、変人なのか、
こどもの頃から、
「みんなが好き」というものに、
どうも興味が持てないようなところがあります。
友だちの中には、単純に、
「流行っているもの」を追いかけている子もいたし、
「みんなとおなじもの」を共有できることが楽しい、
という子もいました。
「流行っているものは、いいものに決まってる」と考えていた人も、
「流行ってるものを知らないのは恥ずかしい」という人もいた気がします。
でもね。
素直に、ドキドキしない。ぐっとこない。
だから、ちっとも覚えられないし、
みんなの会話に入れない。
「どこがいいのか、わかんない」などと口にした日にゃ、
「MISUMIは変わってる」の「信じらんない」のと言われ、
なんだかどんどん、
「みんなが好き」というものから、
距離を置くようになっていた気がします。
やがて、ズドンとハートに突き刺さる音楽と出会い、
頭の先からつま先まで音楽に漬かる日々の中で、
いわゆる「通(つう)」の友だちもたくさんできて、
やっとのびのび、
音楽の好き嫌いを語れるようになりました。
だからね。
ほんっとに、もの凄い長い間、
音楽を本当に好きな人は、
いわゆる「売れているもの」を夢中で聞いたりしないものだと、
完全に勝手に思い込んでいたんです。
プロが「売れているもの」を語るのは、
それが仕事になるからで。
「商品」としての「売れ線」をつくることと、
心からやりたいと思う音楽をつくることには、
少なからず隔たりがあるものだと、
いや、もう、完全な思い込みなわけなんですが、
本気で信じていました。
最初に「あれ?」と思ったのは、
ある女性シンガーのヴォイトレをしていた時のことです。
「この間、●●さんとお仕事ご一緒したんですよ〜。
いやぁ〜、素晴らしかったなぁ。やっぱり、あの人の歌はすごいですね〜」。
●●さんと言えば、レジェンドと言われるほどの大スターです。
●●さんの歌のよさなんか、さっぱり理解できないなんてことは、
仕事柄、もう、絶対に口に出してはいけないこと、くらいの人です。
それでも、そこそこ有名シンガーである彼女が、
「大好きなんです。」「ものすごく影響受けました。」
などと連発するのを、
もの凄く不思議な気持ちで聞いていました。
・・・そっか、世の中には、
「売れているもの」を、心から好きで、その影響を受けて、
プロフェッショナルになる人もいるんだよな。
なんて当たり前のことに、
私はずっと気付かないで来たんだろうと、
いやー、本気で自分に呆れました。
こんなこともありました。
某売れっ子ロックバンドのプレイヤーと
楽屋で一緒になったときのことです。
休憩時間中にCDを買い込んできた彼に、
「何を買ってきたの?」と聞きました。
どこか無意識に、
聞いたこともない洋楽のロックバンドの名前が出てくると思い込んでいた私。
「ユーミンの新譜なんだよ〜。いや〜最高だよね」。
と答える彼に、
受けた衝撃を悟られないようにリアクションをすることに、
ものすごく苦労したことを覚えています。
売れるのは、
「売れ線」を狙うからじゃなく、
自分自身が心から好きで、
最高だと思うものを、
たまたま、
たくさんの人が同じように「好きだ!」と思ってくれるから。
たくさんの人が「大好きだ!」と思うものを、
自分も心から好きだから。
どんな「売れる仕掛け」をしたところで、
この純粋なパッションが通っていないものは、
やっぱり売れないんですね。
だって、「本当に好き」な人じゃないと、
なにがぐっとくるのか、結局、わからないですから。
逆説的に言うならば、
売れないのは、
みんなが大好きなものを好きになれないから。
自分が大好きなものに、
みんなが興味を持ってくれないから。
こうなると、
「みんなが好きなもの」をイマイチ好きになれない人が
本気で売れたかったら・・・
1.「みんなが好きなもの」の中に、
自分が本気で好きになれるものを見出すか、
2.「自分が本気で好きなもの」を極めて、
世間が振り向いてくれるのを待つか。
はたまた、
3. そんなレースはすっぱりあきらめて、
「自分の好きなものだけ」を追いかけていくか。
その3つにひとつしかなさそうです。
そして、こんなことを、
「面白いもんだよねー」と語れるようになっただけでも、
年を取るのはいいもんだ、と思うわけです。
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