大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

音楽はドラえもんのポケット

   

音楽に何を求めるか?

音楽から何を取り出すか?

音楽で何を実現するか?

 

100人いれば、100人違う答えが返ってきます。

 

正解は、もちろんない。

正解はないけど、みんな正解を探している。

そして、みんな、自分なりの正解をちょっとずつ導き出して、
それを大切に思っている。

 

テクニックを極めたい人がいて、
芸術を極めたい人がいて。

自己表現の手段のひとつとしている人もいれば、
快楽を感じるツールにしている人もいる。

音楽は喜びと感じる人。
音楽は愛であると言い切る人。
いやいや、音楽は人間的な感情を超越したスピリチュアルな美だ、なんて人もいた。

 

 

音楽は2つのスピーカーのど真ん中に座って、
目を閉じて聞くものだ、という人がいて、

踊れない音楽なんて、音楽じゃない、という人がいて、

スイングしなけりゃ意味がないって人や、
音楽にはROCKとそれ以外しかない、なんて人や・・・

 

自分の音楽を商品に、ビッグになって、外車乗り回したい、って人がいて、

とにかくプロと呼ばれたい、って人がいて、

 

仕事なんかにしないで、ただ音楽と一生付き合っていかれたらいいや、
って言う人がいて。

 

音楽やるのは、自己実現だって人。

音楽やるのは、女の子にキャーキャー言われたいからだって人。

音楽やるのは、やらずにいられないからだって人。

音楽やるのは、それが永遠の憧れだからだって人。

音楽やるのは、そこに音楽があるからだって人。

音楽やるのは、他に楽しいことが見つからないからだって人。

音楽やるのは、お酒を美味しく飲むためだって人。

音楽やるのは、友達いっぱい出来るからだって人。

 

自分にできるのは音楽しかないからって人も、
音楽の才能はないけど、やりたくてたまらないんだって人も、
音楽に救われたから、自分も音楽で誰かを救いたいって人も、

 

たかが音楽でしょ?って人も、

あたしは楽しくやりたいだけなんで、って人も、

やるなら徹底的に、真面目に取り組みたいって人も、

 

音楽で自分を成長させたいって人も、
音楽はボケ防止なんですよ、って人も、

音楽やってると嫌なことを忘れられるって人も、
音楽の力にいつも助けられてますって人も、
音楽やるってホントに苦しいことなんですよって人もいる。

 

アーティストがいて、
ミュージシャンがいて、
作家やアレンジャーがいて、
プロデューサーやディレクターがいて、
マネージメントがいて、興業屋さんがいて、
音響さんや、照明さんがいて、映像スタッフがいて、

レコード会社があって、
メディアがあって、
販売店や販売網があって、

オーディエンスがいて、ファンがいて、
明日のプロを夢見る人たちがいて、
音楽学校があって、先生がいて・・・・

 

みんな、自分なりの正解を、
音楽というドラえもんのポケットから取り出している。

 

誰が正しいとか、誰が間違っているとか、

誰が誰より上だとか、劣っているとか、

そういう議論は、
タケコプターとどこでもドアと、どっちがすごいかみたいな議論とおなじで、
ホントに無意味です。

 

でも人は、時に、自分が正しいということを自分に納得させたくて、
人をねじ伏せたり、優越感を感じたりしたくて、

ついつい、お前は間違ってるとか、
そんなの全然音楽じゃないとか、言っちゃうんですね。

 

自分の正解を見つけたくて、苦しんでいる人もいる。

手を伸ばすほどに、正解がどんどん遠くなっていくように感じる人もいる。

描いた理想を実現できなくて、挫折感を味わった人もいるでしょうし、

自分の選び取った答えが、正しいのか、答え合わせをしたくてたまらない人もいる。

 

答えは人間の数だけある。
音楽から自分が取り出したものを、大切にする。
人が取り出したものをリスペクトする。

何を取り出したっていいんだ。
それがいつか、自分の正解になる。

 

それでも「わかってねぇな」って、鼻で笑うようなヤツには、
こう言ってしまおう。

「お前もな」。

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 - 音楽

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