なにこれ?こんなんでいいの?
20代前半まで、
アートなんて自分とは無縁のものだと思っていた私が、
ツアーのすき間時間を利用しては、
土地土地の美術館を訪れるようになったのは、
移動日に友人に誘われて出向いた、
倉敷の大原美術館で、
ゴーギャンの絵を見た瞬間に、
どかんと「何か」を受け取ってしまったからでした。
今では、美術館を目当てに海外に出かけるほど、
アートに触れる時間が大好きです。
なにがわかるわけではありません。
なんのうんちくもありません。
でもね。
なんか、どかんと受け取る。
美術館の作品を、ひとつひとつ丁寧に、
解説を読みながら、じっくり見る、
・・・というような、美術愛好家でもありません。
すぅ〜っと作品の前を通り過ぎる。
すると、いきなりグワッと心つかまれる。
それで、その作品の前にじっと立って、
一体なにが自分の心に突き刺さったのかを、
さらにさらに、感じ取る。
なんか、そんな雑な見方です。
先日も書きましたが、
やっぱりね、アートはエネルギーなんですよね。
私にとって。
何に心打たれるって、
「なにこれ?」
「こんなんでいいの?」
みたいなもんに、タイトルつけて、
「アート作品だ!」と言い切って発表する、
その、アーティストたちの潔さというか、
勇気というか、
そんなエネルギーに感動するんです。
曲書いてても、文章書いててもそうなんですが、
無から有を生み出す行為は、決断と思いきりの連続です。
混沌とした、自分の思考や感覚の中に眠る何かを、
ひょいっとつかみ出す。
制作が迷いなくすぅ〜っと進むときもあれば、
振り払おうとするほど、
ますますごちゃごちゃしていくこともある。
それで、心がカチッとはまるポイントで、
「できたっ」となるわけですが、
それをはじめて人に聞いてもらう時、
読んでもらう時は、とんでもなく勇気がいるものです。
何年やっていても同じです。
世の中、なんか言いたい人は山ほどいる。
そんな人たちの「なんか」をいちいち聞いていたら、
自分の中から生み出された、エネルギーのかたまりは、
しゅるしゅるとしぼんで、お蔵入りになってしまうか、
いじくり回されて、ぶっ壊されてしまうか、どちらかです。
「酷評されることなんて、全然平気〜」
なんてアーティストは一人もいません。
ひとりも、です。
それでも、なんでも、
自分を信じる。
自分のパッションを、自分のエネルギーを、
自分の「できたっ」を信じる。
その勇気と潔さに、
心から、心から感動するんです。
私がアートを追い続けるのって、
そんな勇気をもらいたいからかもしれない。
いや、きっと、そうなんですよね。
関連記事
-
-
ホンモノか?ニセモノか?
「あいつはホンモノだよ」 「なんか、あの子、ウソくさいのよね」 一般の人たちがど …
-
-
インスピレーション
いい曲書こうと思って、何時間ピアノの前に座っても、何フレーズ書いても、ちっともし …
-
-
解釈は聞き手にまかせる
ずいぶん前のことになります。 アメリカ人の友人が主催する、 英語で書かれた詩ばか …
-
-
「シロウトが一番怖い」
「シロウトが一番怖い」とはよく言ったものですが、 その真意がわかるようになったの …
-
-
「R&Bって、お洒落やねん」
連日ワークショップの仕込みをしながら、 遠い昔の友との会話を心の中で無限リピート …
-
-
音ジャンク vs. 音グルメ
先日、お友達の某有名ドラマーKさんとお話していた時のこと。 レコーディングの際の …
-
-
「すごい人」と、自分との距離。
どんな分野にも、すごい人というのはいるものです。 すごい人に出会う度に、自分の凡 …
-
-
「これで完璧!」って、なぜ言える?
神は細部に宿る。 通り一遍やるなら、誰でもできる。 ひとつ、ひとつの精度をどこま …
-
-
音楽時間を最大化するためのコツ。
仕事の精度の高い人は、切り替えがうまい。 昨今、私の周辺の「できる人」を見ている …
-
-
音楽ソフトが使いたい!でも、PCが苦手?
最近昔話ばっかりで恐縮です。 生まれてはじめて、 自分でオリジナル曲を録音した時 …
- PREV
- 「センスがない」ってなんだよ!?
- NEXT
- 練習するのは、全てを忘れるため