「シロウトが一番怖い」
「シロウトが一番怖い」とはよく言ったものですが、
その真意がわかるようになったのは、
間もなく88才ぞろ目を迎えようとしている母のひと言です。
私やジェフ夫さんの出演するライブやイベントに、足繁く参戦する母。
自宅が藤沢にあることもあって、
コロナ禍のこんな世の中になるまでは、
ライブ後は我が家に一緒に帰宅してお泊まり、
というのがお決まりのパターンでした。
音楽はど素人の母。
帰りの車の中で、時折、
「シロウトだからわかんないんだと思うんだけどさ…、」
と前置きした上で、
「あの人の歌、うまいの?」とか
「なんか、パンチのない演奏だったなぁ。あのギター、プロなのよね?」
などと、こちらがドキッとするようなことを言い出します。
なんで、ドキッとするかというと、
そこそこキャリアのある人なんだけどねぇ…とか、
あぁ、今日はちょっと不調だったかな…などと、
口に出さないまでも、
なんとなくその日の演奏が残念だった人たちの名前が挙がるから。
長年ライブに通ううちに、知らず知らず耳が肥えたのか、
それとも、なーんか、会場の雰囲気で言っているのか、
母のそんなことばを聞くたびに、
ジェフ夫さんと私は、顔を見合わせます。
ひーー。わかっちゃうんだ。
音楽はエネルギーです。
技術的なことはわからなくっても、
エネルギーが乗ってなかった演奏は、すぐピンとくる。
「いい声出てなかったなぁ」とか、
「今日はグルーヴ、イマイチだったね」などと、
長年音楽をやっている人が
左脳で考えて、言語化するより、
「パンチがない」とか、
「ぐっとこない」とか、
「イマイチだった」とか、
ふわっとしたことばで言われる方が、
たいがい、的を得ていて、恐ろしいもの。
あぁ、音楽って、
心で聞くもんなんだよなぁと、しみじみ思うわけです。
長年音楽をやっていると、
わかったような口をきく人のことばに耳を傾けたくなるものだけど、
いやいや、
「シロウトなんで、わかんないけど」と、
あっけらかんと、感想を述べる人の言うことの方が、
往々にして、ずばっと確信をつくものなんですな。
くわばら、くわばら。

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