大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

そんなこと、 何年やってても、絶対にうまくなりません。

   

プレイヤー目指して、
日夜がんばっていたにもかかわらず、
てんで上達しなかった自分の、
楽器の練習方法に思いを馳せると、
「イケてない練習」というのがくっきり見えて、
苦笑することしばしばです。

たとえば。

ギターをやりたい!と、
思い立ったとき、
一番最初にすることって、なんですか?

今なら、まぁ、必ず、ググりますね。

「エレキギターってなあに?」
「アコギとガットギター、どう違うの?」からはじまって、
ギターの選び方、
ギターを教えてくれる人から、
今すぐつかえる練習教材まで、
ぜんぶグーグル先生が教えてくれます。

インターネット以前の昔の人(←私もふくめ)は、
そうはいきません。

今なら涼しい部屋で
パタパタとPCを叩けば即座に、
簡単に手に入る情報の破片を、

兄弟のご機嫌を伺いながら教えてもらっったり、
ギター雑誌を(多くの場合立ち読みで)読みあさったり、
友だちとお茶の水あたりの楽器屋に通ったり・・・

そうやって、楽器を手に入れる前の段階から、
失敗したり、悩んだり、悔しい思いをして、
結構なエネルギーと時間を費やしてきたわけです。

いわば、スタートの段階から「やる気」と「本気」を
試されていたと言えます。

しかし、肝心なのはここからです。

きちんとしたギターを手に入れた。
教材も買った。
先生についたり、スクールに申し込んだりした。

これで、うまくなると思っちゃう人、
いやーーーー、
私も含めて、ほんっとにたくさんいるんです。

私自身のイケてな〜い話をすれば、

私は、音楽をやるには、
絶対譜面が必要だと思い込んでいました。
そして、どんな音楽にも、
モーツアルトやショパンの譜面が存在しているように、
譜面があるものだと思い込んでいました。

だから、最初はとにかく、
譜面探しに、ものすごいエネルギーをつかいました。

最初は、
銀座や渋谷のでっかい楽譜屋さんの存在も知らなくて、
楽器店を見つけると走りこんでは楽譜を探しました。

そして、そうやって苦労して見つけた譜面は、
もう絶対だと思っている。

最初はコードの本まで買い込んで、
歌本にぜんぶコードのダイアグラム書き込んだり、

タブ譜とにらめっこで、
指の押さえ方を練習したり。。。

こんなこと、
何年やってても、絶対にうまくなりません。

これらはぜんぶ二次情報。

人からもらう情報だけ追いかけていたのでは、
自分自身の実力を高めることはできないんです。

本当に価値ある情報は、
自分自身で苦労して、くふうして手に入れた、
オリジナルの情報です。

たとえば、です。

私の後にこんなオオモノの名前を出すのは
はばかられすぎますが・・・

かの有名なジミヘン=ジミーヘンドリックス。
右利き用のギターを反対に抱えて弾くことで有名ですが、

彼が右利き用のギターを弾いたのは、
左利き用のギターを弾きたかったのに、
それがなかったから。

もちろん、誰かが弾き方を教えてくれたわけはありません。
自分で弾けるようになったんです。

これぞ、オリジナルの情報!

そして、達人になるひとは、
このオリジナルな情報の宝庫です。

だから、語り出すと、みんな、ほんっとうに深い。
そんなとここだわってますか〜??
みたいな話になると、もう面白くて朝まで飲めます。

情報がなんでもお手軽に手に入る時代です。

情報を手に入れる努力を怠るのは、
もちろんあり得ませんが、

ググって手に入る情報なんかに満足していてはダメです。

自分の目で、耳で、脳で捕まえる情報こそが、
生きた情報として、自分を支えてくれるのです。

あなたは一次情報、持っていますか?

◆【ヴォイトレマガジン『声出していこうっ!me.』】
ほぼ週1回、ブログ記事から、1歩進んだディープな話題をお届けしているメルマガです。無料登録はこちらから。バックナンバーも読めます。

 - B面Blog, My History, 「イマイチ」脱却!練習法&学習法, イケてないシリーズ

  関連記事

学ぶ姿勢

誰かから何かを学ぶときは、 ひととき自我のスイッチを切り、 その人の言うことを、 …

「歌がうまい」って、なんなのよっ!?

歌なんか、習うもんじゃない。 ウンザリするほど聞いたことばです。 正直、私もずっ …

誰もが自由に発信できる世の中では、 「プロフェッショナルな送り手」は不要なのか?

インターネットのおかげで、 個人が自身のコンテンツを自由自在に 広められる時代が …

デモをつくれ!

「音楽の世界で認められたいなら、 とにもかくにもデモをつくれ」と、 音楽学校でも …

『きみ、ホントに、よくプロになれたよねぇ。』②

さて、たった2本のトラを引き受けただけのはずが、 いきなり全国ツアーを回ることに …

手癖でやらない。 慣れでやらない。

ここ数年、 自分というコンテンツを最後の一滴まで、 言語化、文字化、映像化して絞 …

無価値感になんか負けないっ!

20代の終わりの頃、 洋楽コンプレックス、英語コンプレックスを払拭するために、 …

教える人のやる気を奪う「イケてないリアクション」

生徒やクライアントのポテンシャルを引き出すのが、 トレーナーや講師の仕事。 しか …

理屈は後付け。

先日の『イケてないロック・ヴォーカルは、なぜイケてないのか?』、 たくさんの方に …

「東京って、やっぱりすごいんですか?」

週1回ほど京都の音楽学校で教えていた頃。 よく顔を見るギター科の学生と エレベー …